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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

疳の虫封じ

浮世っ子

 

 「なんてまあ癇癪ばかり起こす子だろう。きっと疳の虫が居るに違いない。疳の虫を退治するには蜂の子が一番だ」
小さい頃、思うようにいかないと、良く癇癪を起こして母親を困らせたらしい。私より兄の方がずっと癇癪持ちだったのに、疳の虫、蜂の子と聞いただけで、兄の方は蜘蛛の子を散らすより早くどこかに雲隠れ。手っ取り早く何でも言うことを聞く私の方を先にと考えたらしい。
 ん?疳の虫、ん蜂の子?虫がこの世で一番嫌いな私は、幼いながら虫という言葉に反応し逃げようとしたが、時遅し母親にぎゅっと首根っこを押さえられて兄のように雲隠れなんてできなかった。というわけで、蜂の子を食べさせられる羽目になった。
 母親は父親に頼んで屋根に幾つかあった蜂の巣を取ってきて私の目の前で、巣の中の薄い皮を剥ぐと、この世で一番見たくないグニャグニャとした真っ白い蜂の幼虫が出てきた。頭の先にちょっと黄色い何かがついていたがそれ以外は真っ白で、気味が悪い以外の何者でもなかった。まさか私がそれを食べるなんて死んだ方がましだった。しかるに無慈悲な両親は私を押さえつけ拷問よろしくこの世で一番恐ろしい所行に出た。何が何か分からないまま口に放り込まれグエグエと戻しそうになる私の口を押さえ喉に何かを流し込んで送り込んでしまった。悪夢のような一瞬が過ぎるとまさに私は気を失ってそれでもちゃんと蜂の子を食べたらしい。
 「なんとまあこの子の癇癪すっかり収まってしまった。さすが蜂の子効果抜群」
 母親が驚くくらい私は大人しくなったらしい。事実は二度とあんな思いを為たくなかったからなのだが。
大人になって蜂や、蜂の子がヘボといって高級食材で素晴らしい料理だと言うことが分かった。でも、あの体験はよく効き、感情を荒立てることがうんと少なくなった。

 

(完)

 

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