河上輝久
昭和四十年後半、大阪郊外の羽曳野市恵我ノ荘に家を建てる事になった。土地を整地した後、棟上げが行われる事になった。私達家族は大工などにお祝いの品を携えて、立ち会う事になった。
無事棟上げ式をを終えた後、一人の大工が、隣の軒下にぶら下がっていた足長蜂の巣を見つけた。何をするのかと見ていると、ライターの火で巣を炙った。そして、真っ黒になった巣を取り除けて、幼虫を取り出した。その幼虫は半焼けのウジ虫の様な姿だった。然も、驚く事に大工は、その幼虫を躊躇せず口に入れた。
「これは美味い! 食べてみる?」
私に一匹の幼虫を差し出したが、その時までは、この様な幼虫を食べられるとは思っていなかった。
「本当に美味いぞ」
何度も言われたので、恐る恐る口に入れると、玉蜀黍のような甘い味がした。
「もう一つ欲しい」
予期せぬ味に、大工にせがんで再び食べた。この幼虫を食べたく近所の軒下を探した。蜂の攻撃をかわしながら、悪戦苦闘しながら十数個の巣を見つけて食べた。本当に美味しかった。
それ以来、郊外に遊びに出かけると、蜂の巣を探し求める自分がいた。その行為は、この歳まで続いてるが、冷ややかに妻は見ているのが癪で仕方がない。更に、食べて見ろと言っても、
「気持ちが悪い」
妻は決して口に入れる事がない。情けない妻に、結婚は間違ったていたと思う事も時 々ある。勇気を出して口に入れると、間違いなくはまるが……。
(完)
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