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蜂蜜エッセイ応募作品

プロポリスと私

みん

 

 私が物心ついたときから十九歳になった現在に至るまで、我が家にはニュージーランド産のプロポリスが常備してある。
 小さい頃は、謎の液体を口のなかに垂らす母を見て「一体あれは何なんだ」と不思議に思っていた。小学生くらいになって母に尋ねてみると、どうやらそれを飲むと元気が出るらしく、高級品にもかかわらずニュージーランドに住む伯父が安価で送ってくれているらしかった。
 不味くて飲むのが難しいため、「○○(私の名前)にはまだ早いよ」と母に言われていた。しかし、私は普通の子供よりもさらに好奇心旺盛な子供で、「みくびるな。私はあんたらが思っているよりも大人だ」という謎の自信があったので、ダメと言われると挑戦したくてたまらなくなってしまうのだ。
 プロポリスも例外ではなかった。どんな味か知りたくてたまらなかったし、何より見よう見まねでやれば上手く飲めるという根拠のない確信があった。
 母がやっていた飲み方はこうである。まず水を口の中に含み、飲み込まずに上を向いて舌の裏側に溜めておく。プロポリスは蓋がスポイトになっているので、そのスポイトで1/3くらいまでプロポリスを吸い上げる。そしてそれを、服などにたれないように口のなかに運び、舌の裏側に溜めた水に垂らしてすぐに水ごと飲み込む。
 自信家だった私は台所に親がいないときを見計らって挑戦した。予想通り、口のなかに水を溜めて、スポイトで少量のプロポリスを吸い上げて、口元まで持っていくところまでは完璧だった。大人になれた気がした。嬉しかった。
 しかし次の瞬間、聞きなれない音がした。「コポコポッ…」おかしいなと思ってスポイトを見ると、プロポリスと混ざった水が吸い上げられていた。口のなかに溜めた水に垂らしたとき、スポイトの先端が水につかってしまっていたため、スポイトをゆるめたときに口のなかの水まで吸い上げてしまったのだった。
 プロポリスは空気や水に触れるとすぐに固まってこびりついてしまうので、舌やはぐき、服などに着くと非常に厄介なのである。プロポリスと混ざった水は、スポイトの内側の壁に無惨に固まってへばりつき、スポイトの先端までも塞いでしまった。
 高級品と聞かされていたので心底焦った。シンクにお湯を出し、スポイトのなかのプロポリスを溶かそうとした。しかし必死の処置の甲斐なく、スポイトのなかで固まったプロポリスはびくともしなかった。
 私は肩を落とし、正直に母に謝った。母は失敗を隠さなかった私を健気に感じたのか、「しょうがないなあ」と言って許してくれた。おそらくあのスポイトが使えなくなったプロポリスの瓶は、中身は残っていたが私の見ていないところで捨てたのだと思う。

 

 自分はまだまだ子供なのだと思った。プロポリスは私を少しだけ謙虚にしてくれた。

 

 またひとつ大人になった気がした。

 

(完)

 

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