今日は蜂が出て来る昔話をひとつご紹介したいと思います。
山形県の民話で『蜂の援助』という物語です。
第7回ミツバチイラストコンテスト応募作品 pupuさん『honey』
『蜂の援助』(山形県民話)
むかーしむかし、あるところに一人の貧しい若者がおったそうな。
あるとき若者は、わずかの銭を持って町へ塩を買いに出かけました。
するとその途中、子ども達がミツバチの腹に糸を結びつけて、ブンブン飛ばして遊んでいるのに出あいました。
「これこれ、可哀想でなえか。はなしてやれ」
若者は持っていた銭でそのミツバチを買い取り、糸をほどいて逃がしてやりました。
無一文になった若者は、どこかで駄賃を稼ごうと歩いておりますと、町一番の長者の門の前にこんな立札が掲げられているのを見つけました。
『裏山の杉の木が何本あるか、一本もたがえず数えた者を娘の婿に迎える』
長者の婿になるのも悪くないと思った若者は、さっそく山に入って杉の木を数え始めましたが、あまりにたくさんあって数えきれません。
すると、どこからともなくミツバチが飛んで来て、若者の耳元で何度も何度もこう囁きました。
「33333ブン、33333ブン、33333ブン……」
若者には確かに「3万3千3百3十3本」と聞こえました。
「きっと、来るときに助けたミツバチが恩返しに来たにちげえねえ」
そう思った若者は、長者の家に行ってこう言いました。
「山の杉の木を数えたら、この家の婿に迎えるというのは本当ですかい?
おら、全部数えたぞ!」
長者は、またデタラメを言いに来た不届き者が来たと若者を睨みました。
「娘の婿にするというのは本当だが、これまで来た者は、皆あてずっぽうの嘘つきばかりだった。
まあよい、聞くだけ聞いてやろう。で、いったい何本あったと言うんだね?」
「3万3千3百3十3本ですだ!」
見事数を言い当てた若者に長者は驚きました。
しかしどこの者とも知れぬ男にやすやす娘はやれません。
「それだけでは婿には決められん。娘は今、この家の一番奥の座敷におる。見事見つけることができたら認めよう」
若者は大きな屋敷の長い廊下を歩いて、つぎつぎ襖を開けて娘を探し始めましたが、開けたどの座敷にも部屋一面にヘビがいたり、ガマガエルがいたり、巨大なナメクジがいたりと、気味が悪くてとてもとても娘を探すどころでありません。
若者はほとほと困り果ててしまいました。
すると、そこへどこからともなく再びミツバチが飛んで来て、
「ここ開け、ブーン。ここ開け、ブーン……」
と、何もいない座敷から座敷へと、若者を導くように飛ぶのでした。
「ここ開け、ブーン、ブン」
と、またミツバチが言いました。
若者が襖を開くと、そこには美しい一人の娘が座っているではありませんか!
そして娘はにっこり微笑むと、優しく若者を迎えてくれたということじゃ。
めでたしめでたし。
蜂版うらしま太郎?
それともわらしべ長者?
人を幸せに導くミツバチのお話し……はちみつ屋としては何だかとってもイイお話しです!(笑)
ミツバチと幸運って結びつきやすいのかもしれませんね!