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蜂蜜エッセイ応募作品

楽しそうな養蜂の世界

竜崎せとか

 

 テレビの某番組で、蜂蜜の特集をやっていた。キラキラと琥珀色に輝く希少な蜂蜜や、命をかけて巣に蜜を運ぶミツバチ達の姿を見て、蜂蜜好きの私も養蜂をやってみたくなった。早速パソコンを開いて「養蜂 やり方」で検索をかけてみる。なるほど、西洋ミツバチより日本ミツバチの方が初期投資が安いのか。巣箱もキットとして売られているものがあるし、案外放ったらかしでも大丈夫と書かれているページが多い。これは面倒くさがりな私でも趣味として始められそうだ。幸い夫の職業は農家。農地としていくつか山を持っているから、気兼ねなく養蜂が出来る。うまくいけば、高価な日本ミツバチの蜂蜜が好きなだけ手に入るのだ。早速明日にでも巣箱の木材でも調達に行こうかと思案していると、夫がリビングに入ってきた。養蜂を始めたいと切り出した私に、夫はすぐに冷静な声で返した。「ハチが沢山いる巣箱を触らなきゃいけないし、多少なりとも刺されると思うけど、本当に大丈夫?」「うーん……防護服越しに触るのはいける気がするけど、刺されるのはちょっと怖いかな」「あとは……やっぱり相手は生き物だから、きちんと毎日様子見てあげたり、お世話しないとだめだよね」夫の言うことは果てしなく正論だ。わざわざ巣箱に住まずとも、自然界にはいくらでもミツバチが住む場所に溢れている。当然、その巣箱が快適ではない環境であれば、彼らはすぐに居なくなってしまったり、全滅してしまったりするだろう。私は暫く腕を組んで想像してみた。脳裏に浮かんだのは、静かな山の中で一匹のハチもいない寂しい巣箱の姿だった。「もう少し、考えてみようかな」夫にそう告げ、私は家にあった蜂蜜を暫く眺めてみた。普段何気なく使っている蜂蜜の有り難みが、その時初めて身に染みて理解できた。楽しそうな養蜂の世界だが、それは決して楽な世界ではないのだと改めて思い知ったのだった。

 

(完)

 

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