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蜂蜜エッセイ応募作品

with 蜂蜜

太田きなこ

 

 小学校一年生の冬。恐らくこれが、私と蜂蜜の初めての出会いだろう。家に帰ると母が、蜂蜜多めのホット蜂蜜レモンを作っていてくれた。それが楽しみで、極寒で辛い片道一時間の通学路もワクワク出来た。
 小学校五年生になった私は、転校した。父が引っ越し祝いにと、同僚から薔薇の入った高級な蜂蜜をもらって帰って来た。その透き通るような透明感に家族4人で歓喜した。トーストにバターを乗せて、その上に透き通る蜂蜜を垂らす。なんて贅沢なんだ。そんな至福の朝で心を満たし、よしっ、と気合を入れて、まだ慣れない学校に向かった。
 中学生になった私は、バスケ部に入った。試合があると、仲間の母がレモンの蜂蜜漬けを作って差し入れしてくれた。レモン強めで口をすぼめたが、愛情と蜂蜜のやさしい甘さが、悔しい気持ちを前向きにさせてくれた。
 大学生になった私は、演劇サークルに入った。ド緊張の初舞台で気合が入り過ぎたのか、声を枯らしてしまった。公演はこれから1週間続く。どうしよう、困り果てる私に先輩が蜂蜜の瓶を差し出した。マヌカハニー。直接喉に付けるようにして飲むと良いよ、役者の中では有名な蜂蜜らしい。喉に直接貼り付く感覚は未知だったが、無事に千秋楽まで声を出す事が出来た。
 大学を卒業した私は、一般企業に就職した。大事なイベントを前に連日残業する私は、正直限界だった。一息つこうよ、と言って同僚が、蜂蜜入りの温かいカフェオレを買って来てくれた。もうすぐ終電の時間。蜂蜜のほのかな甘さに体と心がとろけ、涙を流した。
振り返ると私の人生、“ちょっとピンチな時”には、必ず蜂蜜がそっと寄り添って支えてくれていた。
 37歳になった私は今、人生初の転職活動に挑む。私の机の上には紅茶がある。もちろん、蜂蜜入りだ。

 

(完)

 

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