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蜂蜜エッセイ応募作品

笑顔をくれた蜂蜜

凌霄花

 

 何があろうとも、親子二人で一日に二千円しか使えない状況を経験したことがあるだろうか。私は4年前、息子とDV避難をした。緊急シェルターで過ごした後、社会復帰に向けたシェルターへ移動となり、そこで数週間生活した。着の身着のまま逃げた私たちは、一文無しどころではない。生活用品の全てを手配してもらい、生きているだけでありがたいという状況だった。人は歯磨き粉なしでも歯を磨くことができるし、入浴剤なしでもお風呂に入ることができる。固形せっけんで全身を洗うことだってできるということを知った、貴重な時間でもあった。そんな中、蜂蜜を買おうなどとは思いつきもしなかったのだが、ある日息子が、「ママ、甘~いホットケーキが食べたいよ」と言った。一日に貰えるお金は親子で二千円と決まっている。できるだけ節約し、貯金もしたいと思っていた矢先の提案に、正直気が進まなかったのだが、ホットケーキミックスの箱を手に取った。そこには美味しそうな蜂蜜の写真も載っていた。するとすかさず、「ママ!蜂蜜もたっぷりかけてよ!」という始末。もう後には引けず、なけなしのお金でホットケーキミックス、卵、牛乳、蜂蜜を買い、シェルターへ戻った。シェルターでは、基本的な調理道具や調味料は揃っている。フライパンでふんわりと焼けていくホットケーキを見ていると、親子で待ちきれない気持ちになった。お皿に移し、蜂蜜を垂らす。箱の写真のようなバターはないけれど、こんなにも贅沢な食べ物がこれまでにあっただろうかと思った。親子で一口食べたときの感動は一生忘れられない。しっとりと甘くてコクがあり、辛い気持ちを忘れさせてくれるようなあの味は、お金では買うことのできない癒しや笑顔を与えてくれた。
 現在、私たちは新しい場所で新しい生活を始めている。あの時、息子が蜂蜜をねだったことで心に余裕が生まれ、今も笑顔でいられるのかなと思うと、とても感慨深いものがある。

 

(完)

 

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