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蜂蜜エッセイ応募作品

母のローヤルゼリー

古荘風穂

 

 弟とは、仲が悪かった。
 2歳という年の差というものは、厄介な部分があって、人生や生活がなんでも一緒に進んでいく。
 高校で別 々になるまでは、いつも目に入る距離に弟はいた。
 朝ごはんも、昼も夜も、ずっと一緒。風呂の順番から、テレビのチャンネル争いまで、ちょっとしたきっかけで殺し合いのような喧嘩を、しょっちゅう繰り広げていた。
 弟は、可愛い顔をしていて、髪は茶色でサラサラだったが、偏屈で頑固で、親以外の大人が嫌いだった。子供達の間ではガキ大将のような存在で、火を使ったり、喧嘩をしたり、悪さをやっては怒られていた。口はいつも尖っているか一文字。悪い奴ではないけれど、大人に都合のいい奴ではなかった。
 私は、背が高くて、髪はボサボサの黒い髪。愛想が良かったわけではないけれど、弟の愛想の無さを取繕わなければと、いつもニコニコしていた。できる子ではなかったけど、弟のように派手な悪いさをするような子供でもなかった。
 弟は、食事も偏っていて、母は弟が食べられるものを作るから、私はいつも合わせることになった。
 そういったちょっとした不満が積み重なって、取っ組み合いの時は、私より随分細い弟の腕を思いっきり叩いたりして、泣かせるまでやめなかった。仲直りをさせることができる母は、夕方まで働きに出ていて、喧嘩の時間にはいつもいなかった。
 中学生になってしばらくたったある日、母がロイヤルゼリーのサプリを買って、自分の化粧棚に供えるように置くようになった。
 鼻歌を歌って、そのカプセルに入ったロイヤルゼリーを飲む母。美しくて、私の憧れだった。
 お年頃になっていた私は、母がいない間に、こっそりロイヤルゼリーを飲むようになった。
 飲むたびに、何だかとても綺麗になったような気がしていた。
 ある日、母が気づいた。
 いつもはあまり怒ったりしない母が、すごい顔で怒っていた。
 おそらく、「盗んだ」ということに対して、怒っているのだろう。
 弟と私を呼びつけ、無くなっているんだけど、誰が飲んだの?と、静かだが猛烈な怒りをぶつけてきた。すると、弟が、
 「俺が飲んだ。」と、言った。
 母が、なんで?と、聞くと、
 「強くなれそうだったから。」
 弟は、母の目を見て言った。
 「そう……。ママの大事なサプリなの。もう勝手に飲まないでね。」
 「わかった、ごめんなさい。」
 そのあと、母が風呂に入っているときに、なんで?と聞いた。
 「いや、だって、あれがママが一番怒らない方法じゃん。」
 馬鹿馬鹿しい、私が謝ったのに。と思ったけれど、なんとなく、返事に困って、あ、そう。と言った。
 なぜかわからないけど、その日があって以降、弟とは喧嘩をしなくなった。
 むしろ、周りの友達が驚くほど仲が良い。買い物だって二人で行く。
 私も母になり、ローヤルゼリーを飲むようになって、あの日のことを思い出した。
 もうそういう時期だったのかもしれないけど、その日からというのは明らかだった。
 あの日から、弟としゃべるときは、いつもあの時の弟の顔が浮かぶ。
 私はまだありがとうとごめんを、彼に言っていない。

 

(完)

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