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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜とスプーン

なつめ

 

 幼稚園生のとき、遊具の縄が顔に当たって唇が切れてしまった。私が痛がるので、先生は職員室に連れて行った。そして、給湯室からスプーンと蜂蜜を持ってきて、切れた唇の部分に塗ってくれた。傷を覆うように蜂蜜をちょんちょんとのせる。かすかに唾液と混ざって甘い味がするので、それで私はすっかり安心した覚えがある。今考えると、少し唇が切れたくらいでどうってことはないのだから、手当てというよりは、痛がる幼稚園児を落ち着かせるための蜂蜜だった。
 その目的どおりに安心した私だったが、今では少し傷ができたくらいでは気にしない程強くなり、一人暮らしもできるようになった。
 しかし、どんなに強くなっても如何せん冬の寒さが辛い。備え付けの暖房は故障しているのか、使えないし、使えても電気代が高くなってしまう。だから仕方なく、家では厚着をしながら暖かいものを飲んで過ごしている。
 暖かいもの、と言っても、私はとても面倒くさがりなので、インスタントコーヒーかただのお湯を飲んでいることが多いのだが、蜂蜜があれば加えて飲む。蜂蜜をのせたスプーンをお湯に突っ込み、かき混ぜて溶かし、その後、スプーンを置くときに滴が垂れるのが嫌なので、お行儀悪くもスプーンを口で吸う。お湯で温度が上がったスプーンからは金属の味がする。鉄の味、というのか。それに蜂蜜が加わって、甘い血のような味がする。まるであのときみたいな。少しだけ、蜂蜜も血も、生きている味がする。

 

(完)

 

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