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蜂蜜エッセイ応募作品

逃げるが勝ちの日本蜜蜂

渡辺 碧水

 

 「逃げるが勝ち」という諺がある。無駄な争いは避けるほうが得策(形勢が不利になったときは、あれこれ策を練るより、逃げて身を守るのが最良の策)だという意味。
 この諺を採りあげたのは、蜜蜂の逃去はよくあるらしく、「日本ミツバチ逃去防止器」などの養蜂業者向け広告を目にするからである。
 「逃去」とは、蜜蜂が巣箱から逃げ出して帰ってこないこと。何か気に障ることがあると、蜜蜂は家出し行方不明になるそうだ。日本蜜蜂の逃去習性はデリケートらしい。
 巣を出ていく点では「分蜂」と似ている。分蜂なら蜂群の半分は巣に残るのだが、逃去は、すべての蜜蜂が出ていき、巣が空っぽになってしまうのである。主に越夏期、蜜源枯渇期に発生する。
 今まで懸命に築いてきた巣をなぜ捨てて逃げ去る必要があるのか。心情を察するに、「このままではやばい!」という環境に巣がなったとき、蜜蜂は決断し捨て去るようだ。
 理由の一つは貯蜜不足。夏から秋にかけて蜜源が乏しくなる。貯蜜を人間が採取しすぎると、蜜蜂が巣営するための蜜が不足し、苦闘の末、遂に逃去を決行する。
 その二は蜜蜂の数の減少。夏期には働き蜂の寿命が尽きて死ぬのと、女王蜂の産卵が一時停止するため、巣全体の個体数が減り弱小群になる。そうなると「巣虫(蛾の幼虫)の侵入」や「盗蜂」を受け、巣内が荒らされて産卵、育児、貯蜜ができなくなる。蜂群の合同によって強盛群を作るために巣を捨てる。
 その三は巣環境の悪化。暑すぎる、換気がよくない、危機に晒(さら)されるなど、子育てに適切な環境を保てず、自分たちの巣営が困難になったときには、蜂群はもっと住みやすい場所を求めて逃去する。
 以前に、北九州市の某寺の墓にできた日本蜜蜂の巣の撤去をめぐる話題を採りあげた。一夜にして、蜜蜂は一匹もいなくなったが、真実は、巣を破壊され、環境が悪化したので急いで逃去したのである。
 身の程を知る日本蜜蜂は、無駄な抵抗はせず、巣を捨てて、逃げるが勝ちと、即断で飛び去ったようだ。

 

(完)

 

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