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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

スズメバチそしてミツバチへ

髙橋 均

 

 小さいころ今は空き家となった実家の土蔵の屋根の下に毎年、すずめバチの大きな巣ができていた。夏の暑い盛り、ぶんぶんと飛び回っていたが、さして怖いとも思わずにいた。 それどころか小学生の私たちは、遠くからその巣に石つぶてを投げ込み、ハチに追われて逃げるという危険な遊びをしていた。今から思えば命からがらの刺激的な遊びだった。スズメバチの巣は選挙のときの縁起物ということは聞いたことがあったが、誰も駆除などという人はいなかったように思う。今より人間との共生ができていたのかもしれない。大人になってからは別に気にもとめなかったがいつのまにかいなくなり、巣もなくなっていた。
 一昨年のこと、空き家となった土蔵の周囲の藪を片付けていたときのこと、土蔵の土台の石の隙間から、ミツバチが頻繁に出入りしているのを見かけた。蜜で土蔵の床が腐るような気がした私は、養蜂を趣味とする近所の知人に相談したところ、彼は網のついた帽子を被ってきて、土蔵の床を剥がそうという。早速剥がしてみると、「見てみろ」という。懐中電灯の先に7列ほどの白くきれいに並んだ巣が見えた。「これはもう何年もたった巣だよ」とのこと。縦筋の隙間の石垣だから、スズメバチは入れず、熊も手が届かなかったのだろう。大きくなったものだ。「どうする?消毒液を巣の入り口に塗ればミツバチはもうこなくなるよ」というが私にはミツバチたちがかわいそうな気がして、「巣ごともっていってくれますか」と言ったが彼は女王蜂が欲しいのだそうだ。「うまくとれればいいが」といいいながら巣をとるためのノコギリ持参で、床下に入っていった。しばらくするとビニール袋に入れた巣とともに戻ってきた。床にならべて探していたが、女王バチは見つからず死んだのかもしれないとのこと。かわいそうに思ったが、綿の上で絞った蜂蜜は、2瓶ほどになった。知人に謝礼をして美味しくいただいたのだった。なんとなくりんごの風味がしたのは、近所にりんご畑が多いせいだろう。残された蜂たちが、しばらく飛び回っていたのは知っていたが気にもとめなかった。そして昨年、再び私はそこの藪を片付けていた。ふとみると同じ場所にミツバチたちがぶんぶんと暑い中、出入りしている。よほどこの場所が好きなのだろう。あのときの女王蜂が再び巣を作っているのだろう。どうしたものだろうか。空き家となった寂しい実家に居ついてくれた彼女たちを、再び除去してくれとは言えない自分がいる。

 

(完)

 

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