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蜂蜜人生

上野道雄

 

 妻が珍しく熱心に本を読んでいた。横から覗くと、表題が『ひとさじのはちみつ』で、作者は前田京子とある。本をよく見せてもらうと、帯には「はちみつを常備するのは、家にちょっとした薬局があるに等しい」と書かれている。さらに「軟膏と絆創膏、目薬、歯磨き、胃薬、風邪薬、…はちみつの新しい使い方を、その薬効とともに…」とある。
 蜂蜜は昔から定評のある栄養食材で、最近は特にその新しい効用が評判になっている。私も、子供の頃に風邪気味の時など、母にスプーンで口に入れてもらった記憶がある。しかし、常備していたのではなさそうである。昔は貴重品だったのだろうか。
 結婚してからは、寒い夜などに妻が蜂蜜を入れたココアをた飲ませてくれたことがたまにもある。私と蜂蜜の関わりはその程度のものである。
 そんな蜂蜜に、もっと遠い日の記憶がある。70年以上昔、戦争で丹波の田舎へ疎開した。夏には畑で南瓜(かぼちゃ)の花が咲く。蜜蜂が花粉まみれになりながら、花の蜜を吸う光景がいつも見られた。
 私たちは篠竹の先に輪にした竹ひごを差し込み、それに蜘蛛の巣を巻き付けて捕獲器を作る。そして、南瓜の花にそっと近寄って、その輪で上から蓋をする。蜜を吸っている蜜蜂は慌てて飛び立とうとするが、蜘蛛の巣にくっ付いてもがくばかりだった。
 その蜜蜂を指で摘んでお尻を割ると、中に透明な蜜の固まりがある。文字通り“産地直送”の蜜は、新鮮で仄かに甘い。
 妻の読んでいる本の帯の後ろには「ひとさじのはちみつの食べ方、選び方にもいろいろなコツがある!」と続き、さらに健康のために1日にひとさじでよい。それも寝る前が一番いい…と書いてある。
 妻が読み終われば私も是非とも読んで、これからの余生を蜂蜜と親しく向き合いたい、と思っている。

 

(完)

 

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