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蜂蜜エッセイ応募作品

高級蜂蜜は八掛けで~蜂蜜は嗜好品か~

槙野世理沙

 

 夫婦揃って、お腹の健康のために毎朝ヨーグルトを食べている。乳酸菌はオリゴ糖を餌にしてよく働くときくので、蜂蜜をかける。もうちょっとかけたい。蜂蜜たっぷりにしたい。と思いながら、一昨年まで使っていた量より気持ち少な目でやめにしておく。そう、八掛けくらいに留める。スプーンから滴る蜂蜜がなかなか途切れなかったから、たくさん食べちゃったのは仕方ないんだと言い訳したいと思いながら、いい感じのところで途切れる分量しか掬わなかった小心者の自分を知っている。この瓶一本、1200gで約六千円。つまりこの一匙が……? やめたやめた、計算は苦手だ。怖いからやめよう。冷たい乳製品に乗っかって少しだけ硬くなった蜂蜜を噛み締めるようにして甘さと香りを楽しむ。ああ今日もおいしい。今日も夫婦そろって健康だ。これ以上幸せなことはない。
 ちょっとけちけち使うようになった理由は単純。我が家で買っている蜂蜜のお値段がかつてのおよそ三倍になったからだ。物価高でも円安でもない。我々は高級な蜂蜜の味を知ってしまったのである。もう前に食べていた廉価な蜂蜜の味では満足できない身体になってしまった。ふるさと納税の返礼品で高級蜂蜜を食べてしまったばかりに! とはいえ蜂蜜は蜜蜂がせっせと集めてくれたものである。彼らの人件費ならぬ蜂件費を思えば、我々が払う金額など微々たるものである。ありがたや、と蜜蜂のお世話をする人々にお金を払って「おすそ分け」をいただくのだ。
 健康の為に食べているヨーグルト。では蜂蜜は? 健康の為にやっているはずなのだが、ここまでくるともはや嗜好品だ。嗜好品なら高いものほど脳や心にガツンとくるのは世の定めである。いいものを、もう少し欲しいなというところで辞めておく。一日に食べていいのはこれだけだぞ、と己の理性が欲望を押しとどめ……たまに負ける。おっと手が滑ったと、満足いくだけたっぷりの蜂蜜を使う日がある。ひと月に1回、いや2回、……3回くらいは許されてもいいんじゃないのか。
 夫婦二人とも蜂蜜は八掛けをモットーに使っているにも関わらず、心なしか消費スピードはかつての廉価蜂蜜時代と変わらないか、あるいは少し早いくらいに感じる。どちらかが裏切っているのかもしれないが、夫婦の健康のための幸せな朝の時間、くだらぬ争いは起こさずせいぜい楽しもう。甘い蜂蜜はすばらしい嗜好品なのだから。

 

(完)

 

https://note.com/serisa_naming

 

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