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蜂蜜エッセイ応募作品

ハチミツの魔法

雅 みやび

 

 病気知らずの私が、病の宣告を受けたのは、52才の時でした。
 何で、私が。
 という思いでいっぱいになり、病を患ったことを受け止めることが出来ませんでした。
 そして、なぜ病気になったのか、という答えを求めて模索するも、納得できる答えは見つけられずに、入院する日を迎えました。
 無事に手術を終えるも、これから先の不安な気持ちは拭えないまま、退院を余儀なくされました。
 自宅に戻っても、
 心は晴れるかことなく、無気力な状態と戦っていました。
 せめて、栄養を摂らないと、と思い冷蔵庫を見渡すも食欲をそそられる事はありませんでした。
 そんな時、戸棚で黄金色に輝くビンが、目に止まりました。
 それは、頂き物の蜂蜜でした。
 舐めてみると、想像していたよりも、爽やかな甘味の蜂蜜が、口いっぱいに広がりました。
 どんな食べ物も受付なかった私の胃袋は、蜂蜜の優しい美味しさに魅了され、気付けば、何回もすくって舐めていました。
 久しぶりに感じる、美味しいという感情に、目頭が熱くなりました。
 私は、手術により、左の乳房を失いましたが、蜂蜜の染み渡る優しい美味しさに出会えたことで、自身の現状を受け止め、失われた気力を徐々に取り戻すことができました。
 そして、再出発する勇気をもらいました。
 今、私は、蜂蜜の魔法で、以前にも増して、明るく元気に過ごせています。

 

(完)

 

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