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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

記憶の流れ

なつ

 

小さい頃の曖昧な記憶。確か風邪を引いていて、ひどく喉が痛かった時の事。母が蜂蜜の入ったビンから、スプーンで一杯すくい、「蜂蜜を舐めると治るよ」と言って、それを私にくれた。私はスプーンを口の中に入れ、蜂蜜を舐めた。なぜ今でも覚えているか。残念な事に、とても美味しかったからという記憶ではない。「舐めると治る」が、全然治らなかったから。当時の私は小さな子供。「舐めると治るよ」は、魔法のようにすーっと消えてなくなるものだと考えたのだ。舐めた蜂蜜は、香りと甘さが混ざり合いながら、少し遅れて暖かさをまとった粘り気が喉を通過する。非日常的な感覚に期待は上がった。しかし私が思うようには、効果を感じる事が出来なかった。そしてとてもがっかりした。母親に文句を言った覚えはないが、当時の私はかなりの泣き虫だったから、それなりに迷惑はかけたと思う。その後、1メートルにも満たなかった世界から、10年程の年月とともに、視界が広がっていった。その頃になると、残念ながら魔法のように痛みを消す食材は、無いと考えるようになった。。そして当時の母親の事を考えると、なんとなく申し訳ない気持ちにもなった。視界の広がりが止まった頃からは、しだいに時間の流れが、早くなっているように感じ始めた。それまで一緒の時間の中で、流れを過ごしていた物事と、すれ違うようにもなった。何日もかけて、ゆっくり形をかえながら、流れていく雲。1日の中でせわしなく、行ったり来たりを繰り返す蟻。私は、それぞれの時間とすれ違い、交じりあった。ある日、一匹の蜂が空を飛んでいた。おそらく働き蜂。女王の意思に従い、空を飛んで、必要な素材を運ぶ。女王の元には、空飛ぶ戦士達が結界を張っている。その中で、時間をかけながら、力の源となる、光る液体が作られていくのを感じた。聖なる妖精達によって、私の中で再び、魔法の世界が広がり始めたのだった。

 

(完)

 

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