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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

初めては、こってり甘い。

朽木 杏

 

 何にだって「初めて」がある。当たり前のように自転車を乗り回し、当たり前のように電車を乗り換える私達だって、最初は電車も自転車も「初めて」だったはずだ。
 今では浴びるように摂取しているコーヒーも、初めて飲んだ瞬間が確かにあった。未だに忘れられないのは、初めてカフェに一人で入ったあの瞬間。
 ずっと遠巻きにその店を眺めていた。中学二年生の夏、膝下まであるスカートを膝上まで折り上げ、その緑とオレンジのボーダーが描かれた看板を見上げていた。入ってみたい。お洒落なカフェでコーヒーを飲んでみたい。できれば甘いコーヒーがいい。ミルクが入っているのはどれだろう。勇気を出して店に入ったまではいいものの、レジに置かれたメニューには写真が全く乗っていなかった。どうしよう。エスプレッソって、あの白い泡が乗ったやつかな。ブラックコーヒーはまだ飲めない。モカって、マキアートってなんだ。
 混乱する。目の前のお姉さんは笑顔だけれど、恥ずかしくて聞けない。そもそもなんて聞いたらいいのかわからない。牛乳が入ってるのどれですかって聞く?それだけは嫌だ。だって、ださいじゃないか。
 どうしよう、早く決めないと。そんなとき、私の目に飛び込んできた救世主。
 「あの、は、ハニーミルクラテ、で」
 「ハニーミルクラテですね、サイズはいかがなさいますか」
 「あ、えーっと、真ん中のやつで」
 お姉さんの傍らに置かれた三つのコップ。真ん中を指さす手が少し震えていた。恥ずかしかった。でも、買えた。ラテは、何かわからなかったけれど。でも、ハニーは蜂蜜だ。蜂蜜なら甘いし、きっと大丈夫。
 初めてのラテは、肩に残る緊張と居心地の悪さを溶かしてくれるこってりと優しい甘さだった。浴びるようにコーヒーを飲む今でも、あの初めての甘さが忘れられない。

 

(完)

 

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