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蜂蜜エッセイ応募作品

特別な思い出。

深沼バルキ

 

 昔、おじいちゃんの家に行くといつも決まって蜂蜜の多めに入った甘いホットミルクを飲んでいました。
 と言うのも一度家で作って飲んでみたところ、同じ物を使っていても何故かおじいちゃんのつくるものとは違う味がして、それ以降おじいちゃんの家でしか飲まなくなりました。
 それから数年が経ち、おじいちゃんは亡くなりました。
 当時僕は受験生だったこともあり、葬式に行くことは叶いませんでした。
 受験が終わり、僕はおじいちゃんの家の遺品整理をするために人生最後におじいちゃんの家にいきました。おじいちゃんは小さな庭で野菜を育てるのが趣味で、几帳面な性格だったため、多くの物が箱などに分けられ、整頓されておりそれほど遺品整理に時間は掛からず終わりました。
 親らが今後のことを話し合いはじめると僕と連れてこられた甥は席を外すこととなり、僕は甥と一緒に家の中をまわりました。
二階で話し合いをしていたので、すぐに一階に降り、リビングや和室など部屋を見てまわり、最後に行き着いたのは台所。
 台所にある食器や食べ物は捨てるらしく、まだ置かれたままでまた僕が力仕事をすることになるのだろうと考えていると食器棚に置かれたあの蜂蜜に気付き手に取りました。
 甥はそれが蜂蜜であることを知っているようで何とかして口に入れたそうにしていたので僕は思い出したように古く汚れた冷蔵庫を開けるとそこには目当ての牛乳があったため、僕は食器棚から二つマグカップを取りおじいちゃんがやってくれたように、牛乳を注ぎ、レンジで温め、そこにさっきの蜂蜜を多めに入れました。ある程度冷まして片方を甥に渡すと甥はすぐに一口にし「美味しい」と言ってくれました。
 するとまだ飲んでいないのに胸がぽかぽかと温かくなり、これがおじいちゃんのハニーミルクだとその時僕は感じました。

 

(完)

 

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