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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜は浪漫

どんぐりっ子

 

 実家を訪ねると、母がパンケーキを焼いてくれた。蜂蜜の瓶を出され、あれっと思った。一年前、北海道旅行のお土産にと、函館近くの道の駅で買ってきた同じ百花蜜のはずなのに、我が家のものより色が濃い。
 母にそう話すと驚きもせず、蜂が野山で自由にとってきた花の蜜なのだから一瓶一瓶違って当然だと言う。
 「とれたてのときは同じに見えたものが年月とともに個性が出てきたのよ。本物の蜂蜜だということね」
 母は自分のパンケーキに蜂蜜をひとさじかけると瓶を私に渡す。そして、美味しそうに頬張り、顔をほころばせた。
 「子どものような顔してる」
 思わず吹き出すと、うなずいた。
 「蜂蜜は浪漫よ。人間がコントロールできない産物。だから食べると自然体になっちゃうのかも」
 ふと以前、職場でAIに負けない働き方について意見交換したときのことを思い出した。私が「心ある働き方をすればAIには負けない」と言った際、「心をも内蔵されたAIが開発されたらどうするのか」と反論され、議論は宙に浮いたままになった。その後、蜂蜜もいまにAIの蜂が採取するようになるのかなと思ったりもしたが、母の「浪漫」という言葉を聞き、天然物の価値はなくならないと確信した。人間がプログラミングしたものに浪漫などないではないか、と。
 母が嬉しそうに口をもぐもぐさせている。まさに「浪漫」を食べているかのようだ。目が合うと問うてきた。
 「なに?」
 「長生きしそうだな、と思って」 
 そう答えると、笑いながら蜂蜜の瓶を指さす。
 「これがなくなるまでは、もったいなくて死ねないわ」
 「このほかにも、まだ2 ・3瓶あるでしょ?」
 蜂蜜をしまっている棚を指さすと愉快気にケラケラ笑う。その顔を見ていたら、また蜂蜜を買ってきたくなった。

 

(完)

 

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