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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

医者とミツバチ

九村麟一郎

 

 調べたところによれば、ミツバチの世界は実に厳しいものだ。女王蜂と働き蜂の間には完全な主従関係があり、某ドラマのような倍返しは起きえない。しかも、働き蜂は1ヶ月ほどの寿命を女王蜂のために捧げ、激務の中で太くて短い一生を終える。
 では女王蜂は胡座をかいているかと言えばそんなことはない。いくつもの卵から女王蜂候補生が産まれ、命を懸けた決闘の末勝ち残ったもののみが女王蜂として君臨することを許される。女王蜂になったらなったで今度は部下をまとめ、さらに子供を産み育てるという仕事が待っている。こちらも、産まれてから死ぬまで忙しい。
 ところで僕はこのエッセイを書きながら、ずっとミツバチの世界が何かに似ていると思っていた。そして、今ここでその謎が遂に解けた。
 ミツバチの世界は医者の世界、特に医局にそっくりだ。
 女王蜂=教授のために働き蜂=医局員は全力を尽くす。手術件数、症例数を増やすため、昼夜を問わず動き続け、頭を働かせ続ける。機嫌を損ねたり、駄目だと判断されたら大変だ。どこに飛ばされるのか分からない。
 でも教授だって大変だ。女王蜂候補から念願の女王蜂になっても、次の女王蜂候補と文字通りバチバチの争いを日 々繰り広げている。自分の椅子を虎視眈 々と狙うものがいる。ここは一度女王蜂になれば割と安泰なミツバチの世界より辛いかもしれない。
 ハチミツ=医療の裏では色 々なドラマが起こっている。白い巨塔ほどの強烈な縦社会は今は存在しないらしいのだけど、まあそれなりのピラミッド社会だ。
 結局、蜂も人間も似たようなものなのだと思う。僕らはたまたま言葉が話せているだけで、本質的には周りの生き物と殆ど変わらない。きっと女王蜂の中にも慕われている女王蜂もいれば怖がられている女王蜂もいるはずだ。
 外に出て伸びをする。目の前を一匹の蜂が通過した。この蜂にもプレッシャーとかノルマなどがあるのだろう。「お互い頑張ろうな」そう心の中で声をかけた。

 

(完)

 

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