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蜂の巣取り

かおり

 

 蜂関連の食べ物でいうなら、蜂蜜よりも断然、蜂の子が好きだ。小学生のころ私は蜂の巣取りが得意だった。家の軒下に下がったアシナガバチの巣を自分で取るのだ。私の出身地長野県は昔から蜂の子を食べる文化があり、私に蜂の子が美味しいことを教えてくれたのも親戚のおじさんだった。もっともおじさんが蜂の巣の取り方まで教えてくれたわけではない。自己流で編み出した取り方は次のようなものだった。
 夏の朝、まだ暗くて気温も低いとき、蜂たちは巣にしがみついてじっとしている。そこを狙って霧吹きで大量に水をかける。すると蜂は濡れて飛びにくくなり、のろのろとしか飛べなくなる。用意した捕虫網を巣に引っ掛けてぐいっと引っ張る。巣は根元から取れて網の中に入る。しかし網の中には怒った蜂たちも一緒に入っているので、そのまま近くにいると危険だ。一旦、その場に捕虫網を放り出して退却する。蜂は不思議なもので、一度落ちた巣に興味はなくなるようなのだ。本能で巣は上にあるものも思っているのかもしれない。蜂たちは次第に網から抜け出して、もと巣のあった場所に戻っていき、また巣作りを始める。私は捕虫網を取りにもどり、見捨てられた蜂の巣を手に入れる。
 蜂の子が食べたくて蜂の巣を落とすのだが、蜂の巣は観察すると面白い。薄紙でできたような六角形の部屋が並んでいて、卵、幼虫、蛹になりたての幼虫、成虫になりかけの蛹、と蜂の全ての成長段階がある。いつも、しばらくじっくりと観察した。
 観察好きが高じて、大学では生物学を学んだ。大人になってからは蜂の巣取りなんて一度もしていないので、蜂の子は滅多に口に入らない高級品になってしまった。独り占めして、塩を振って炒めて食べた蜂の子はおいしかったなあと懐かしく思い出す。蜂の巣を取るスリルも、子供のころのわくわくする思い出としていつまでも心に残っている。

 

(完)

 

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