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蜂蜜エッセイ応募作品

ハチミツのチカラ

小河 知代

 

 とうとう何も食べられなくなった。
 食べてもダラダラ ・ ・ ・と吐く。
 日に日に痩せていく父。
 病は父の身体を蝕んでいく。
 
 私は焦っていた。
 何かないか、何かないか、と。
 やっと食べられた、やっと飲めた!
 でも、数分後には吐いてしまう。
 病気の恐ろしさを思い知らされた。
 
 そんなとき、ふと思いついて、
 口に含ませたハチミツ。
 どんどん吸ってくれた。
 美味しい、美味しい ・ ・ ・と、
 笑った父。
 心なしか、顔色もパアッと明るくなった。
 父の命を繋いでくれたハチミツ。
 
 あれから数年。
 母が病に倒れた。
 食が細くなっていく母に、
 迷わずハチミツを舐めさせた。
 凄い力で、飲み込んでくれた。
 良かった、良かった、と、
 一緒に笑った。
 
 父も母も残りの日 々の中にハチミツがあった。
 
 毎朝、わが家の食卓には、ハチミツがならぶ。
 もう何年になるだろう。
 ヨーグルトにハチミツ。
 トーストにハチミツ。
 白湯にハチミツ ・ ・ ・等 々。
 
 父と母の命を繋いでくれたハチミツ。
 感謝しながら、いただいている。
 
 ハチミツのキレイな黄金色。
 甘い香り。
 父と母と過ごした日 々。
 懐かしい思い出。
 私にとってハチミツは、
 大きな大きな存在なのだ。

 

(完)

 

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