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蜂蜜エッセイ応募作品

みつ蜂ジェスチャー

夏秋 香介

 

 日本貿易振興機構ジェトロの仕事でロシアのモスクワに行ったことがある。
 週末に近隣のこぢんまりした市場(いちば)を覗(のぞ)いてみると、蜂蜜スタンドを見つけた。蜂蜜の瓶が円筒形の透明なキオスクの壁に天井近くまでぐるりと積みあげられている。一キロ入りのガラス瓶だから大きく重いが、為替レートのお蔭で割安だ。珍しい黒色の蜂蜜もある。
 貼られているラベルの絵柄は、様 々な花や民族衣装を着た娘さんで、南の温暖なカスピ海や黒海地方を思い起こさせる。中にいるロシア美人の女の子をチラ見しながらあれこれ物色していても、ソ連時代の名残りだろう、一向に売る気の無さそうな素っ気ない様子。アメリカのように店員が、「メイ ・アイ ・ヘルプ ・ユ?」などと、愛想よくしかし五月蠅(うるさ)く寄ってこないから却って気楽なのはいい。
 逆にこちらから、「産地はどこ?」と英語で聞いてみた。案の定、英語は通じない。「ミェド、ミェド」とかなんとか言って、両腕を鳥のようにパタパタやってみせる。人差し指を尖らせて、「プチェラー」と言いながら、自分のお尻にかざすジェスチャーもする。蜂に似た体つきと仕草が可愛い。「蜂蜜なのは見れば分かるよ」と苦笑しながら、絵柄を見て選ぶ。
 女の子にいいところを見せたいという色気に加えて格安だから、全部買い占めたいほどだが、飛行機の重量制限を考えて三個に我慢。
 日本では決まった銘柄の蜂蜜しか売っていないのは、なぜだろうかと思う。北から南に長い日本列島にはいろいろな花が季節ごとに咲く。各地の蜜があるはずなのに、スーパーやコンビニで売っているのは、中国レンゲ蜂蜜くらいだ。消費量が少ないから流通しないのか、店頭に並ぶ種類も量も少ないから、人びとは食さないのだろうか。蜂蜜は高価なイメージがある。「病気の時の滋養食品だから高くてもいい」となっていないだろうか。
 せっかくの健康食品が、もっと普通に利用される値段とバラエティであればいいと思う。

 

(完)

 

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