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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜とレモン

中井 伸治

 

 幼かったころ、私はよく熱を出す子だった。母は扁桃腺が腫れて熱が上がってしまわぬようにと、私によく蜂蜜レモンを作って飲ませてくれた。蜂蜜とレモン果汁をお湯のなかでブレンドすることによって出来上がるその飲み物は、喉が腫れ、水分を取ることさえ億劫になった私を幾度となく救ってくれた。
 最近調べた情報では、レモンに含まれるクエン酸は、みかんの約6倍であり、糖質とクエン酸を一緒に摂ることによって素早い疲労回復が見込まれるとのことだった。またレモンに豊富に含まれるリモネンには、リラックス状態の時に出るα波を発生させる効能があることがわかった。
 母はそんなことを知ってか知らずか、熱を出すと必ずといって良いほど蜂蜜レモンを飲ませてくれた。幼かった私には、その蜂蜜レモンがまるで母のやさしさそのもののようにみえていた。
 やがて私も大人となり、妻と結婚をし、2児の赤子を授かった。赤子たちは産まれた瞬間から、私の大切な宝物となった。少しづつ背が伸び、次第に言葉を覚えていき、赤子から幼児へと成長していく彼らの姿に、いつも感動させられた。
 子供たちが風邪をひくと、私は幼かった頃を思い出し、母と同じように蜂蜜レモンを作る。まだ母のように上手には作れないけれど、少しでも私のやさしさがレモンの甘酸っぱさとともに子供たちに伝わりますようにとまじないをかけながら作っている。

 

(完)

 

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