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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

チェンラーイの田舎の市場

熊澤 文夫

 

 30年もの昔、タイの古都チェンラーイのホテルを基地にして、世界最大の淡水魚プラーブクの探査を企て、ラオスとの国境メコン河の村に足繁く通っていた頃の話である。
 ある日、郊外の鄙びた村に、小さな市場があるとホテルのスタッフから聞くに及んで出かけてみた。一部だけが草葺屋根でほとんどが青空市場である。狭い通路を巡っている内に、縁台の上で蜂蜜を商っている露店にぶつかった。壜詰もあるにはあるが、大半が巣そのままの状態で放置してある。蜜蜂がブンブン飛び交い、巣に止ったり離れたりしていた。おばさんに声をかけると、「ナムプンコーングテー」(本物の蜂蜜)とのこと。山の天然モノだというのだ。一つ選んで買いたいがと言うと、群がる蜜蜂を手で払い払い袋に入れてくれた。それを宿に持ち帰り、早速巣を素手でギュッと搾って蜜をコップに垂らしてゆく。それを一口味わってみると、たちまち得も言われぬ甘味と香が口中いっぱいに拡がってゆく。あまりの旨さに自制が利かず、気が付いてみると、コップ八分目ばかりあった量がほぼ空である。
 しばらく経つと、私の体が急に軽くなってきて、空中に浮遊するような感覚に襲われた。体重が感じられないのだ。ともあれ、原因が蜂蜜にあることは明らかだった。気分が高揚し室内を歩いてみると、まるで宇宙飛行士が月面を歩いているごとくフワフワして気持ちがよい。タイ人言うところの「サバーイサバーイ」(気分は最高)なのだ。恐らく、野生の花の蜜に含まれる何かの成分が脳に作用して気持ちを軽くさせ、それが体をまた軽くさせたのであろう。そうとすれば、蜂蜜が人の健康維持に積極的に関わっていることに納得がゆく。体調不良や病気に罹った体の重さを蜂蜜が軽くして癒してくれる事実を、あまねく人類は早くから知り、蜜蜂との良好な関係を築いてきたことが偲ばれたのである。

 

(完)

 

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