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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

桐の木を植える

川村 均

 

 小学高学年でしたが、ぼくには初めての花咲く森の体験学習でした。
 網のついた帽子をかぶって顔が刺されるのを防ぎながら、蜜蜂の箱から取り出した蜜の棚を取り出し、これを輪転機にかけてぐるぐる廻すと、下の穴から濃厚な蜜がトローリと流れ出てくるのでした。係りの人が大きな甕に移したあと、ほんの少しスプーンですくってなめさせてもらうと、その甘いことといったらありませんでした。
 「大切な蜜を集めるために蜜蜂は一日に十回も外に飛び出していくのです。一回に集める量は自分と同じ体重のわずか六十グラムです」
 「そんな蜜蜂の大切なものを食べちゃったらかわいそう」とぼくが言うと、「よいところに気がつきました。蜜蜂は花の受粉を助けるお礼に蜜をもらっているのです。受粉によって木や野草は実をつけて子孫を増やすことが出来るのです」
 「だからそんな大事なものを食べてしまっていいの?」となおも聞くと、「蜂蜜のおかげで丈夫な体を貰っている人はたくさんいるし、大切にしてやれば蜜蜂もきっと喜んでくれると思います。その証拠に私たちは手袋をせず、優しい蜜蜂を育てる努力をしています」
 なるほどと思い、ぼくは肯いたのでした。
 「ねえ、うちの庭にも花の咲く木を植えよう」と家に帰って母に言いました。
 「そうねえ、何の木がいいかしら。花の咲く木はたくさんあるし」と母。
 やがて庭に一本の桐の木が植えられました。妹が大きくなってお嫁に行くときにこの木から箪笥を作って持たせてあげることもできるからでした。

 

(完)

 

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