渡辺 碧水
蜜蜂が造る巣(六角形の巣房群)は精緻な「ハニカム構造」になっている。
このことに関して、当蜂蜜エッセイ欄での私の投稿は既に五回に及んでいる。
読み返してみて気づいたのだが、根本的というか、基礎的というか、最も謎と思われる事柄に、うかつにもほとんど言及していなかった。
蜂の行う具体的な作業の実際である。
そして、養蜂関係書物などでも、その構築過程は既に自明なことのようにさらっとしか書かれていない。
例として、最近の手引き書の一冊『養蜂大全』(松本文男著、誠文堂新光社)から、関係記述を抜き出して、要約してみる。
「巣の原料となるのは、花の蜜を原料とする、主に若い働きバチの腹部のロウ腺から分泌されるミツロウ。空気に触れると固まり、ウロコのような薄いロウ片になってしまうので、働きバチはこれをくわえ、唾液を混ぜてこね合わせ、器用に巣を構築する。触角で穴のサイズを計測しながら六角形にしていく」
驚嘆の念は、「触角で穴のサイズを計測しながら六角形にしていく」過程、つまり、正六角形の巣穴を整然と並べていく作業の実際なのだが、どうも詳しく書かれてない。
そこで、改めて働き蜂がどのようにして精緻なハニカム構造の巣房を造るのか(造巣過程の細部)について述べている文献を探してみた。
一般の書籍では探せなかったのであるが、その道の第一人者と思われる研究者たちとその研究成果の学術報告とを少し見つけた。
わかった結論を先に言えば、働き蜂が具体的に、正六角形の巣穴を順次増加させていき、見事な完成巣(巣脾=すひ)に仕上げることについて、現状は、どうやら細部まではまだ解明されていないらしい。
「触角で穴のサイズを計測しながら六角形にしていく」などとは言っても、推測で語っており、その詳細を養蜂家も研究者も確証的に観察できていないようだ。
では、どの程度までは明らかにされているのだろうか。理解を深める資料の一つとして、探し得た研究報告や報道記事を紹介しておきたい。
【六角形巣構築の過程(二)へ続く】
(完)
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