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ミツバチと共に90年――

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 蜂蜜については、いくつか思い出すことがある。
 例えば、受験が近付いたある時期から、毎朝母が出すココアの味が妙になった。「変な味がする」と言ったら、母は何でもない顔で「あ、はちみつとしょうが入れたからかねえ」と答えたので、あやうくココアを吹き出すところだった。チョコレートと、はちみつと、しょうが。甘い甘い少しピリ辛、その三つが無理やり同居させられた混沌の飲み物を、私は結局受験が終わるまで飲み続けた。これも子供に風邪をひかせないようにという母の親心、しかし彼女はあまりにもはちみつを過信しすぎではないか。私の母は、はちみつを万能薬だと思っている節があった。
 そんな母に影響を受けたのか、いつの間にやら私にも「はちみつさえ舐めとけば大丈夫」という謎の信頼が生まれていたようで、冬場、喉がひりひりしたりすると、スプーンにたっぷり琥珀色のはちみつを垂らして、飲む。口の中がとろとろと甘たるくなる。しかし、嫌になるような甘さじゃなくて、何となく上品な味。さらにひとさじ欲しくなる。が、際限がないのでこの辺りでやめておく。
 また私は、非常事態に備えてはちみつの飴を持ち歩いている。ここまで来れば、もう母の過信を悪く言える立場ではない。まあ、そうは言っても、あまり頻繁に舐める訳でもなく、お守りのつもりで持っていた。しかし、それが活躍する機会がやって来た。
 学校の文化祭で友人や先輩が歌の発表をした。その時期、風邪が流行り始めていた頃で、咳をしながらリハーサルをしている友人にはちみつの飴を配った。控室を覗いてみると、がらんとした部屋に一人、先輩が倒れていて仰天した。先輩は体調を悪くされており、歌の発表まで休もうと横になっていたのである。
 ぐったりした先輩の前で、私は悩んだ。お世話になっている方ではあったが、部活の先輩でもなく、微妙な距離感があったのだ。とりあえず、私はおずおずと飴を差し出した。
「あの、いります……?」
 先輩はちらと私を見上げて、一度「いいよ」と手を振ったが、少し間を空けて、飴を受け取った。そしてそのまま発表へ向かった。無事に成功したらしい。
 極端な話、はちみつは舐めなくても、効果を発揮するのかも知れない。信じる者は救われる。私はやはりはちみつを過信し続けよう。

 

(完)

 

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