渡辺 碧水
【蜜蜂の巣は神秘な形(二)から続く】
中央部分の底面も、互い違いに組み合わさる立体的な六角形。二面の巣房がちょうど半分ずつずれ、底の先端がピラミッドのような形をしている。
各巣房が隙間なくピッタリくっつき、均一に力が加わる。このため、穴の側面も底面も簡単に破れることがない。かえって強度を高め合っている。
このように、働き蜂が分泌する蜜蝋でできている蜂の巣は、構造的に耐久性と貯蔵性に優れており、営巣に使用する材料を少なくできる利点も備えている。
蜂群が分蜂する時や、女王蜂を交代させる必要がある時などには、十~二十ミリの円錐形の女王蜂候補育成用の巣房も複数造られる。奥行きは二十~二十五ミリほどである。
これが「王台」で、水平に並ぶ巣房の縁に垂れ下がるように垂直に造られる。
巣造り時の働き蜂の様子を見てみると、蜂たちは互いに密集して働く。これによって、ワックスの分泌と加工に最適な温度である三十五℃が保たれる。
一つの巣房は多数の働きバチの共同作業で造られ、同時に各自のペースで作業が進められるので、人の眼には、巣房造りは忙しそうに無秩序に行われているように見える。
最初に構築されるのは巣の屋根あるいは側面にあたる部分で、同時に数箇所から作業は始まる。全体の作業は適当に進められても、できあがった構造は非常に正確である。
正六角形を並べたハニカム構造は、構造的に非常に丈夫な形として知られ、飛行機の翼や人工衛星の壁にも応用されているそうだ。
蜜蜂がなぜ六角形の巣房を造るのかということについては、まだわかっていない。
だが、材料を最小限におさえて、できるだけ広い空間を利用しようとしていることは、間違いなかろう。丸や八角の形では巣房同士の間に、三角や四角の形では巣房の内部に、無駄な隙間や空間が生じる。
材料に無駄がなく、丈夫で、耐久性と軽さを産み出す最も効率的な形状は六角形。
作業を行う働き蜂は短命で、分業で働くので、技術の伝達や継承とは考えづらい。本来備わっている優れた本能に加えて、進化の過程でその能力を獲得してきたのだろうか。
(完)
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