渡辺 碧水
東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場のトラックの走路は「非常に走りやすい」と、殊のほか選手に好評である。
その主因が走路裏面のゴムの「ハニカム構造」であることは既に紹介した。
この名称の由来となった整然と並ぶ蜜蜂の巣の断面六角形の集合体が、何を素材にどのようにして造られ、どんな構造になっているかについては、意外と知られていない。
自然界に存在する蜜蜂等の蜂の巣房は、正六角形または正六角柱が隙間なく水平に並び、衝撃吸収性などの特長を備え、見た目も美しい形状「ハニカム構造」になっている。
理想を現実化した究極の一形状。これを、蜜蜂が創造し、今も使い続けている。
自然の蜂の巣は、その場所の空間に合わせて造られ、大きさもさまざまである。
蜜蜂の巣の基本的構造は「巣房(巣穴)」と呼ばれる小部屋の集合体。これを「巣脾(すひ)」という。通常の巣は複数枚の巣脾からなる。
「巣板」という場合は、養蜂の巣箱内に並べる人工の巣脾を指して呼ぶことが多い。
自然の蜂の巣は、基本的に巣脾が鉛直方向(垂直)に垂れる平面状の構造をしている。
巣箱に巣板が縦に並べるのは自然に似せて造られるからであろう。
巣の領域は大別して、上部と両サイドが貯蜜圏、中央部から下方が育児圏になる。
一枚の巣脾には、数千個もの巣房がきれいに並ぶ。定規もコンパスも使わず、断面が六角形の幾何学模様群を、蜜蜂は多数匹の共同作業で一昼夜にして完成させるのだそうだ。
蜜蜂は、頭部にある触覚を巧みに使い、美しいハニカム構造の巣を造る。自らの触覚を基準にして長さを測り、正確な六角形を形づくるのである。
巣造りの材料は、働き蜂自身の腹部にある、対になった八つの分泌腺から分泌される「蜜蝋(みつろう=花蜜と花粉が自身の体内で化学変化した分泌液)」が使われる。
蜜蝋は「ビーワックス」と呼ばれるが、いわば天然の固形ワックスなのである。
働き蜂は産まれてから十五日ほど経つと巣造りを始める。蜂蜜を腹一杯食べた後、天井からぶら下がり、二十四時間じっとしている。
【蜜蜂の巣は神秘な形(二)へ続く】
(完)
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