はちみつ家　>　蜂蜜エッセイ

初期の風邪に蜂蜜一匙（前）

渡辺　碧水

　咳が出始め、風邪かな？と思ったら、すぐ蜂蜜一匙をなめるのが効果的とされる。
　二〇二〇年九月二日、ＮＨＫテレビの番組「あさイチ」で、「はちみつ徹底活用術」が放映された。
　番組は蜂蜜を使うだけで簡単に大幅カロリー減できるレシピなど、毎日の料理の万能調味料としての使い方が主であったが、咳にも効果的だとの紹介があった。
　「あさイチ」が料理術の中に「風邪の引き初めの咳に蜂蜜」の話題を付け加えたのは、つい先日報道されたイギリスの蜂蜜の研究成果に影響を受けた可能性がある。
　二〇二〇年八月十八日、英国医師会が発行する医学専門誌『ＢＭＪ／ＥＢＭ（英国医療雑誌／科学的根拠に基づいた医療）』に、オックスフォード大学の研究グループによる論文「上気道感染症（風邪症候群）の症状を緩和するための蜂蜜の有効性：系統的レビューとメタ分析」が載り、日本では八月下旬に紹介された。（括弧内は筆者補足）
　概要を簡単に言えば、風邪に対する蜂蜜の緩和効果を調べた臨床研究報告を集め、その成果を同一観点で包括的に再分析し、比較検討を加えた。そして、蜂蜜の有効性について、統合的見解を発表した。
　これまでに行われた十四件の臨床試験（子供に限らない患者総計約千八百人を対象とした臨床研究）を再検討したところ、比較されたすべての風邪の治験で、蜂蜜が一番効果的であることが確かめられたのだそうだ。
　軽度の風邪に抗生剤を服用してもあまり効果は得られず、初期の風邪なら、まずは抗生剤の代わりに蜂蜜を摂ったほうがいいという。効果的で有害性が低いうえに、薬剤耐性の悪影響も避けることができる。
　なお、一口に蜂蜜といっても、どれも同じ品質ではなく、様 々な成分による複雑な物質なので、風邪の咳に特に効果的な蜂蜜もあるかもしれないが、今回分析された研究では各種の蜂蜜が使われていて、その効果はどれも一貫していたそうだ。
　世界各地で古くから民間療法として、蜂蜜の各種効能が伝えられ、風邪の咳や喉の痛みの緩和策としてよく使用されてきたが、それが科学的に再確認された。
　【初期の風邪に蜂蜜一匙（後）へ続く】

（完）