渡辺 碧水
【ベトナム産蜂蜜は低価格(前)から続く】
ベトナム蜂蜜の世界一低価格は、蜜源花のアカシア交雑種に主因があり、その樹の花蜜の品質の低さにある、というのがベトナムの養蜂専門家の見解である。
だが、その詳細は他でも語られていないので、実態も真相もよくわからない。
二〇一〇年十一月一日のベトナム投資ニュースでは、ベトナムの蜂蜜輸出は総生産の八十~八十五%を占め、世界でトップ十の中に入った、と伝えられていた。この約十年の間になぜこう大きく変化したのだろうか。
ベトナムの森林では、ベトナム戦争で失われた天然林に代わる早生樹の造林が急速に進められてきた。大量に植林されたアカシア ・マンギュウムの林の中で、二種類のアカシアが自然に交雑し新種が偶然に生まれた。
この突然変異のアカシア交雑種は、成長が早いうえに比重が高く、強度があることから、建築用材などに利用でき、さらには産業用植林に適している、と確認された。
当然、国土の緑化と輸出チップ材を目的に、この交雑種の植林面積はどんどん増加した。大半を輸出に向ける蜂蜜も、この交雑種から得られる花蜜によるわけである。
「アカシア ・ハイブリッド」と呼ばれるこの交雑種の人工林は、いわゆるクローン(複製)苗によっているわけで、樹種の誕生が問題なのか、風味や成分が問題なのか、生産過程の衛生管理等が問題なのか、この樹の花を蜜源にする蜂蜜は次第に評価が下がり、輸出の量も価格も下がってしまったらしい。
しかし、真相は不明。日本に輸入後の蜂蜜も表には出てこない。生産元や品質は明らかにされない業務用やブレンド用として使用されているのだろうか。
アカシア交雑種を蜜源とする蜂蜜の輸出減問題は、蜂蜜の消費量の多いベトナム国内では、輸出用と割り切られているのか、さほど話題にもなっていないようだ。
美食の国ベトナムでは、楊貴妃が愛したと言われるライチ果実の風味がそのまま残る濃厚な味わいの「ライチ蜂蜜」をはじめ、各地の特産品、主に果物樹木を蜜源花とする蜂蜜が一般に愛食されているらしい。
(完)
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