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蜂蜜エッセイ応募作品

非加熱蜂蜜の表示(四)

渡辺 碧水

 

【非加熱蜂蜜の表示(三)から続く】
 糖度の高い蜂蜜には、粘りの強いものがあり、すぐに結晶化するものもある。処理作業の際、粘りの強い状態では、作業能率が悪いし、濾過や容器詰め等に面倒を伴う場合もある。熱を加えると、蜂蜜はサラサラに溶けて水のように流れがよくなるので、処理が容易で能率が上がる。
 蜂蜜の処理工程では、時間短縮と作業効率のために、含有成分の変化は二の次で加熱処理をする場合が多かった。
 本物の蜂蜜は保管環境の温度などで結晶化する。当然のこととして理解されていない日本では、結晶化した蜂蜜の扱いを面倒がる人が多いし、無知で結晶化を劣悪品や不良品と誤解する人も少なくない。
 結晶化した蜂蜜商品は、評判が悪く嫌われるので、店頭に売りやすい融解液状で並べるためには、結晶化を防ぐ温度に保つため、低温で加熱(保温)し保存し続けるか、出荷前に結晶をいったん加熱して溶かさなければならない。
 輸入蜂蜜には、以上の他にも加熱を余儀なくされる条件がさらにいくつか加わる。
 こう見てくると、他の理由なども勘案し、日本で市販されている蜂蜜は、ほぼすべて加熱処理をされているとみるのが妥当であろう。
 ところが、目にした人も多いと思われるが、「一切の加熱処理をしていない(完全な非加熱処理の)蜂蜜である」という類の表現で自社商品を紹介する宣伝が結構ある。
 そこで、流通蜂蜜の非加熱処理の割合を調べてみた。加熱情報はめったに公開されないため、実際のところは把握できていないようで、インターネットで調べてみても、数量的な表記は容易に見つからない。
 やっと見つけた推定的なものには、根拠や出所が不明だが、〇 ・〇八%ほどとあった。つまり、輸入品を含めた国内販売の蜂蜜全体に対する割合と思われるが、約九九 ・九%の蜂蜜が加熱されているのが実態であるらしい。
 率直な感想だが、「(一切の)完全な……」というのは、自社商品の特長や工夫を強調したいが故のオーバーな表現ではなかろうか。
【非加熱蜂蜜の表示(五)へ続く】

 

(完)

 

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