渡辺 碧水
【非加熱蜂蜜の表示(二)から続く】
そして、「非加熱」もまた使用されるにつれて、別な意味に重点を置いて使われ始めた。こんどは、採蜜以後の蜂蜜の処理工程(濾過から個詰めまでの作業)で、「加熱処理をしていない」という意味で使われるようになった。
意味が変化してからは、以前の「濃縮」に置き換わって、しばしば「処理」の語も加えられるようにもなった。
単純化すれば、「非加熱濃縮蜂蜜」→「非加熱蜂蜜」→「非加熱処理蜂蜜」と変化したともいえる。
「非加熱処理」が強調されはじめたことは、既に常態化していた「高温加熱処理の問題」が蜂蜜の商品化工程においてあったからである。
加熱処理が問題視される理由の一つは、蜂蜜は野菜と同様に、熱に弱い栄養成分(酵素、ビタミン類などの栄養素)を多く含んでいるためで、高温加熱によってその成分が壊れ損なわれてしまうおそれが高いこと。
それに、天然の蜂蜜自体は、本来、加熱処理など不必要な食品。普通、食品の熱処理は殺菌や消毒のために行われるが、蜂蜜には既にそれらの作用が備わっていて、そのままで長く賞味期限を保つことができる。
第二に、高温の加熱によって、せっかくの美味な蜂蜜の風味が飛んでしまい、味覚にえぐ味(苦味)が出てくることもある。色が黒みを増し、花の香りが失せ、どこか焦げた感じになる。
第三に、「蜂蜜は加熱すると毒になる」との考えもある。アーユルヴェーダ(インド大陸の伝統的医学で、世界最古の長寿科学思想)は、蜂蜜は毎日食べたほうがよい「有益な食べ物」だが、加熱処理は毒素を生み出すので、加熱蜂蜜を食べてはならないとする。(これには異論 ・反論がある)
このように、蜂蜜の加熱処理に関して、できるだけ避けるべき理由は挙げられても、ぜひ必要だとする理由は見当たらない。
それにもかかわらず加熱処理が加えられるのは、蜂蜜本来の状態や性質にある。
【非加熱蜂蜜の表示(四)へ続く】
(完)
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