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蜂蜜エッセイ応募作品

朝しぼり ・夕しぼり(後)

渡辺 碧水

 

【朝しぼり ・夕しぼり(前)から続く】
 「夕しぼり」は、早く絞る分、新鮮な感じがして、生産効率も上がるが、内勤蜂による濃縮作業がまだ行われておらず、水分量が多いままである。これでは売り物にならないので、機器を使って人工的に高温で加熱処理し、水分を蒸発させ、糖度八十%程度に濃縮する必要がある。
 高温の加熱処理は、蜂蜜の有効成分や栄養素を破壊して、品質を劣化させてしまう。熟成されていない未完成な蜂蜜である上に、有効成分の大半が失われてしまえば、変質や変色が起り、味も香りも落ち、ただの甘い粘液に過ぎない。
 一方、「朝しぼり」は、一晩経過する間に、三十五度程度に保たれている巣温に加え、内勤蜂自身が羽を震わせるなどして水分を飛ばし、水分二十%(糖度八十%)程度にまで濃縮する作業を行う。
 内勤蜂は、蜜の糖度が増し、熟成し、保存に適した状態になると、巣板の巣房に蜜蝋で蓋をする。
 夜が明けるころには、作業が完了し、濃厚な味になっている。これが完熟した本来の蜂蜜である。蜜蓋作業の完了がいわば合図となり、養蜂家は採蜜可能な状態と判断する。
 ただし、これは最短熟成の場合である。
 実際には条件は多様で、巣板全体が蜜蓋でおおわれる完熟状態になるまで、内勤蜂の羽ばたき風当て作業はもっと日時を要することが多い。
 濃縮された結果、分量は減るが糖度が十分に高まり、さらに人工的な加熱処理をする必要はない。自然なままなので、味や香り、風味を保った濃厚な蜂蜜となる。
 日本国内の良識ある養蜂家は、蜜蜂の習性に合わせ、栄養豊富な熟成した蜂蜜が得られる「朝しぼり」を行うのを常としている。
 ところが、消費者の中には、加熱濃縮したり、甘味料を混ぜたりしていても気づかない人がいるため、「夕しぼり蜂蜜」に甘味料を混ぜるなどして廉価な買い易い製品にし、多売しようと企む悪徳業者の潜入を完全に阻止できない懸念があるそうだ。
 蜂蜜を買う場合、「朝しぼり蜂蜜」であることをしっかり確認する慎重さも必要なのである。

 

(完)

 

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