渡辺 碧水
蜂蜜は、採蜜のタイミング(採蜜時の時間帯)から「朝しぼり(朝採り)」と「夕しぼり(夕採り)」に大別される。
田舎育ちの私は、牛や山羊の搾乳に「朝しぼり、夕しぼり」があることは知っていたが、蜂蜜の採蜜にも同じ名の作業があるのを知らなかった。そこで、調べてみた。
「しぼり」は「強く圧して液を出させること」を意味し、漢字は「絞り」か「搾り」が充てられる。巣板の巣房から蜂蜜を分離する(しぼり落とす)作業を指し、いろいろな名称の分離機器を使って行われる。
牛乳の場合は、朝と夕で乳成分の数値が異なり、夕しぼりの方が朝しぼりよりも数値が高くおいしいと聞いている。
蜂蜜の場合は、同じ蜜源花から採れたものでも、養蜂家が採蜜する時間帯が朝方か夕方かで、全く品質の違う別物となるのだそうだ。
外勤の働き蜂は昼間、花を巡り訪ねて花蜜を集める。その日集めた分を蜜胃一杯に溜めて巣箱に持ち帰る。巣に戻る間に、体内の唾液酵素と消化酵素の働きで蜜に変化が起き始めている。
巣に戻ると、内勤の働き蜂に口移しで渡す。受け取った内勤蜂は、息の吸い吐きによって、蜜を空気に触れさせて、蜜の水分を蒸発させる。
このようにして、蜜蜂の身体内を二回通ることによって、分泌される酵素と混ぜ合わさり、花蜜のショ糖(スクロース)の成分はブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解される。
内勤蜂は、蜜を次 々と巣房(六角形の巣穴)の集合体である巣板に溜め込んでいく。この段階の蜜は、まだ水分を多く含んだ状態である。
先に「夕しぼり」を説明すると、日中にいったん巣房に溜め込まれたものを、その日の夕方の時間帯に採蜜する方法をいう。
一方、「朝しぼり」は、その日の夕方ではなく、一晩経た(一晩待って)翌日になって、午前の早い時間帯に採蜜する方法をいう。
【朝しぼり ・夕しぼり(後)へ続く】
(完)
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