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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつ王子

宮内瑞穂

 

 孫たち三人の朝食には、トースターで食パンをこんがり焼いて、お皿にのっけて差し出す。
「はちみつちょうだい!」「私はジャムがいいな」
パンにぬって食べるお好みをそれぞれが指定してくる。起きたばかりなのにこの元気だ。食欲があるのが嬉しい。
「はいはい」と言いながら、冷蔵庫からはち蜜とジャムを出す。
このはち蜜を購入した時に「はちみつ王子」と名乗った、愉快な養蜂場の後継者を思い出した。

 それは日帰りバス旅行で、房総の方へ行った時のことだった。地元でみつ蜂を飼育し、はちみつを販売しているという工場に立ち寄った。後継者のご挨拶という事で待っていたら、
「私めは社長代理です。社長の息子で名前は「はちみつ王子」と申します」
頭に蜂を防御する際の、黒いネットをかぶった青年が、いきなり目の前にあらわれてのパフォーマンス。その恰好にみんながどっと笑い転げて、立ち寄っただけの見学だったのが、一挙に盛り上がった。

「この辺りの花の蜜を集めてくる、優秀なみつ蜂たち。これがそのみつ蜂達が集めてきたはち蜜です。これは噓偽りのない、純粋な国産品です。誠実そのものの私を見れば、それが本当だとお分かりになることでしょう。どうぞ皆様、安心してお買い求めください!売り切れない内に、早い者勝ちですよ。急いでください。さあ買った!買った!」

 そのアピールの上手なことに、みんな顔を見合わせて、感心しきりだった。このはち蜜王子の演説が終わるや否や拍手喝采。実に愉快で頼もしい養蜂場後継者だった。

 蜂蜜のびんの蓋をあけながら
「これははちみつ王子様からのプレゼントなのよ」と孫達に言うと「なに、それ?」と不思議そうな孫達の顔。あのはちみつ王子の口上を思い出して、そっくりに再現してみせたら、朝の食卓は大笑いとなった。こうして束の間の楽しい朝食は、終わったのだった。

 

(完)

 

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