渡辺 碧水
会場スタッフが笑顔で「お待たせしました。三蜜デザートで~す!」とテーブルに載せると、「エーッ! これが…」と、客が目を見張る。
そんな和やかな光景に満ちる日はそう遠くないだろう。
二〇二〇年六月十九日、北海道新聞で、札幌市内の「センチュリーローヤルホテル」が用意する「新北海道スタイル宴会プラン」が紹介された。
新型コロナウイルスの蔓延で激減した宴会利用客を呼び戻そうと、感染対策に工夫を凝らした安心 ・安全配慮の企画。当然「三密(密閉 ・密集 ・密接)」の回避を重視。
「三蜜のデザート」が出るという。「三密」をユーモアとしてメニューに取り込み、客席に明るい雰囲気を漂わせようと、料理スタッフが創作したらしい。
調べてみると、品名は「白桃のシロップ漬け/蜂蜜アイスと共に」とあった。「三密」にちなんだ三種の蜜「蜂蜜、水蜜桃、糖蜜」を使用した逸品。
デザートを見た参加客に「三種の蜜って何?」「蜂蜜とあるけど、あと二つの蜜は何?」などと、謎解き話題で花を咲かせてもらう趣向か。
ふと、そんな場面を想像した。
そして、もし遊び心をさらに盛り込むのなら、もうひと工夫し「蜂蜜入りアイスクリーム」と思われる「蜂蜜アイス」を「蜜ダイヤ」にすると面白い、との思いが膨らんだ。
そうすれば、三種とも蜜名を伏せた謎解きメニューとなる。蜂蜜はコチコチの凍結片(または結晶片)を使い、琥珀色のダイヤを装う。
「白桃は水蜜桃」と解くのは容易だが、「シロップ」を日本語で「糖蜜」と言うのは案外知られていない。圧巻は固形蜂蜜。蜂蜜は冷凍しても凍らないという常識を覆し、業務用冷凍庫で凍らせて出す。驚きの「新デザート」に、新型コロナも脱帽だ。
会場で、スタッフが「三蜜」を解説すると、客同士は感心して目を輝かせる。
聖書は「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」と説く。ホテルの練達が客に希望を伝える時はもうすぐだ。
「三蜜」を巧みに組み合わせた傑作スイーツは、他にもいくつか誕生している。
【創作三蜜スイーツ(後)へ続く】
(完)
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