渡辺 碧水
【近代養蜂の先駆者 ・ヤンシャ(前)から続く】
もう一つの紹介記事を挙げてみる。
国際養蜂協会連合スロベニア地域組織委員会のF ・シビック氏は、二〇〇二年発行の日本の学術誌『ミツバチ科学』二十三巻三号に、論考「スロヴェニアの養蜂一養蜂は生活そのもの―」を寄稿している。その中で「すぐれた養蜂指導者」と題してアントン ・ヤンシャの業績を、次のように述べている。
「巣門飾りの流行と時を同じくして、スロヴェニア出身の偉大な養蜂指導者アントン ・ヤンシャの仕事が始まる。…(中略)…画家をめざしてウィーンへ行き、一七六九年に優秀な成績で美術学校を卒業した。しかし有名な画家になることが、彼に用意された運命ではなかった。当時オーストリアの女帝マリア・テレジアの命で帝都ウィーン市内アウガルテンに養蜂学校が設立され、小さな木造の蜂小屋も造られた。この学校の初代養蜂指導者にヤンシャは任命された。故郷から持ち込んだ蜂の生態に関する深い知識と比類なき知覚力、そして持ち前のウィットにより、彼は養蜂のすばらしい理論家であり実践家であるという名声を得た。
ヤンシャには二冊の著書があり、当時一般には想像もできない卓抜した考えを幾つか述べている。…」
一般に、近代養蜂の特徴は蜜蜂を家畜として飼育管理するところにあり、十九世紀半ばの可動式(取り外しのできる)巣枠箱などの開発が幕開けとされる。
一世紀前のヤンシャの時代は蜜源植物が豊富で定置養蜂であったが、開けて中を見ることができる箱型の巣箱を考案し、それを積み重ね再利用する蜂小屋を造り、各巣箱をカラフルに色づけする巣門飾りを不動の伝統にしたのが、画家でもあった彼だとされている。
また、彼の遺した指導書は、実践的な技術書であるばかりでなく、蜜蜂を愛し、人と蜜蜂が共生する精神も説いたものだったとされる。
これらのことから、スロベニアだけにとどまらず、世界的にも、近代養蜂における先駆者であることが認められたのであろう。
(完)
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