渡辺 碧水
【日本での西洋式養蜂の導入(前)から続く】
埼玉県の養蜂家 ・貝瀬収一氏は、日本における養蜂の歴史を膨大な文献史料について詳細かつ緻密に追究し、現時点で判明した分の詳解をホームページで「日本養蜂の歴史」と題して公開している。
その内容等と、日本の代表的団体のホームページの「日本の養蜂の歴史」の関係記述とを照合した結果、差異が認められると思われる部分(誤記修正等を含む)は次のとおりである。
代表的団体の記述の流れにしたがい、「団体記述」→「貝瀬氏等記述」の形で差異を示す。
(一)「内藤新宿勧業寮出張所」→「勧業寮内藤新宿試験場」
(二)「勧農局試験場」→「勧農局内藤新宿試験場」(略称は新宿試験場。現在の新宿御苑)
(三)「同年九月」→「明治八年(一八七五年)三月頃~同九年十二月」
(四)「十二月二十八日には」→「その時期(明治十年一月または前後一か月)から」
(五)「アメリカから」→「米国カリフォルニア州から」
(六)「イタリア国種」→「イタリアン種」
(七)「明治十三年(一八八〇)」→「明治十一年(一八七八年)十一月」
(八)「勧業寮から転出した」→「内務省勧農局一等属書記官から内務省勧農局小笠原出張所長に赴任した」
(九)「数百郡」→「数百群」
このように細部にわたって差異を比較してみると、この団体の記述に代表される「世間に広く伝えられている内容」と、貝瀬氏等による史料解読から得られた内容とは、かなり違っているように思われる。
この団体の記述は『畜産発達史/本篇』(農林省畜産局編、中央公論事業出版、一九六六年)を中心にまとめられたとのことだが、この部分については史実の確認が不十分だったことを意味するのではなかろうか。
教訓としては、先輩たちの尽力に敬意を払いつつも、不明瞭のままかもしれない史実の明確化に傾注してみる余地はまだあるだろうということである。
(完)
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