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蜂蜜エッセイ応募作品

トルコのアンゼル蜂蜜(四)

渡辺 碧水

 

 【トルコのアンゼル蜂蜜(三)から続く】
 消沈していた村の養蜂家たちの生産意欲が蘇り、新規に養蜂を始める人まで現れるほどに活気づいた。需要がぐんと高まったことで、価格の上昇で収入増も約束された。
 こうして、「アンゼル蜂蜜を世界中の人達に食べてもらいたい」というセデフさんの夢は、現実のものとなった。
 超高級蜂蜜が熊に執拗に食い荒らされる悲劇は、一養蜂家の仰天アイディアで大逆転を生み、奇跡的な幸運を招き、正にアンビリバボーな話となった。
 テレビ番組の話題はここで終わる。ほっこりした興味深い話であった。
 だが、すべて「めでたしめでたし」で終わらない点も残る気がする。
 厄介な関係に陥っていたはずの村の養蜂場と熊との現実はどう解決されたのか、肝心な点がわからない。
 調べてみると、二年前の話なので、日本でも何度か紹介されていた。気になる点を一つだけ挙げてみる。
 当時、この話題を掲載した地元新聞『ヒュリットデイリーニュース』の記事で、一連の実験から「熊がアンゼル蜂蜜を好んで第一に選ぶ」と結論づけた上で、セデフさんは、自分と熊との関係を語っている。
 「五頭の熊がある時期になると定期的に私の家を訪れます。最初は三月十五日ごろで冬眠から覚めた後、次が冬眠前の十一月ですね。交尾のために来るようです。……外には数種類のパンを用意しておきます。…」とある。
 熊を餌付けしていたと思われる。そう見るせいか、映像を見直してみると、熊もセデフさんも、相互間の警戒感が甘く、危険を避ける距離も近いように思える。
 味を知った蜂蜜を求めて、セデフさんの養蜂小屋を壊したのは、時折、彼の家を訪ねていた熊だったのでは、試食場面に現れた熊も、と思えてならない。
 また、熊の嗅覚は人間の百倍とも二千倍とも言われるほど鋭敏だそうだから、食べ慣れた蜂蜜の匂いを即座に判別して他に関心を示さなかったのは、当然とも言えそうだ。
 これも、野暮な追求をやめて「熊の恩返し」話と見れば、世界に類例をみない乙な蜂蜜の味の素となり、他では得難い逸品と言える根拠にはなる。

 

(完)

 

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