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蜂蜜エッセイ応募作品

トルコのアンゼル蜂蜜(二)

渡辺 碧水

 

 【トルコのアンゼル蜂蜜(一)から続く】
 その蜂蜜盗難事件とは?
 二〇二〇年四月九日、フジテレビの番組「奇跡体験!/アンビリバボー」の中で、『ハチミツ盗難!犯人は?』と題して放映された。
 前回述べたように、アンゼル蜂蜜の養蜂は、高原地域に住む約二百軒の農家が担っていた。
 番組は、その農家の一人、元副市長のセデフさんを主に経過の展開を追った。
 アンゼル蜂蜜に誇りを持ち、副業として養蜂を行う彼は、地元にしか知られていないこの蜂蜜を世界中の人達に食べてもらいたいという夢を抱いて、懸命に生産事業に取り組んできた。
 盗難事件の続発は、そんな夢を打ち砕くもの。
 犯人を突き止めるべく、倉庫の前に巣箱を置き、監視カメラで撮影した。何と、そこに映っていた犯人は「ハイイログマ」。毎晩、何頭もの熊が現れ、やり放題で巣箱の蜂蜜を食い荒らしていた。
 セデフさんだけに止まらす、他の養蜂農家も同じ被害に遭っており、地域全体の年間被害額はおよそ三百万円に及んだ。
 彼は、対策として巣箱倉庫を金網で保護してみた。だが、熊は地面に穴を掘り、コンクリートの薄い部分を破壊し、中に侵入。倉庫の屋根に置いても、難なく登ってしまう。
 この地域では、人が熊に襲われたという例はない。熊は人間の姿を見ると、怯えて逃げていく。人の気配がない時にやって来て食い荒らすので、被害は依然として続いた。
 熊を銃で撃ち駆除する方法もある。だが、セデフさんらは、「熊もこの高原で暮らす生き物。人間の都合で退治するのは不合理」と、共生の途を模索した。
 そこで、彼は試してみた。アンゼル蜂蜜以外の物を餌に与え、熊の食欲を満たすこと。パンや果物、安価な蜂蜜などを置いてみた。
 しかし、それでも熊がアンゼル蜂蜜の巣箱を荒らす被害は止まらない。悩んだあげく、多くの養蜂農家はやる気をなくしてしまい、ついには、廃業を決断する人まで現れた。
 そんな時、セデフさんはある実験のアイディアを思いついた。
 【トルコのアンゼル蜂蜜(三)へ続く】

 

(完)

 

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