渡辺 碧水
前に、六回にわたって「本物の蜂蜜は結晶化する」ことを書いた。
その(五)で、「水分が少なく糖度が高い蜂蜜は、凝固点が低く、家庭用の冷凍庫では、蜂蜜は凍結化も結晶化もしないのだそうだ」と述べた。
後日、説明が不十分だったと気づいた。
一般的に、「蜂蜜は冷凍庫でも凍らない(凍結 ・氷結しない)」から「凍らせて賞味期限を延ばすこともできない」というのが常識になっている。
こうした説明や理解は、厳密には適切でない。
液体状のものが固まって固体状になる点で似ている「凍結化」と「結晶化」とは、同様現象の別表現と思われがち。
だが、内実は異なる。「凍結化(凍る)は、水分が変化して起こる現象」であるのに対して、「(蜂蜜の)結晶化(固まる)は、ブドウ糖(グルコース)が変化して起こる現象」である。
蜜蜂が熟成させた本物の蜂蜜は、おおよそ二割弱の水分と約八割の糖分とからなる。そして、糖分の約半分がブドウ糖の成分である。
全体の約四割を占める蜂蜜のブドウ糖は、プラスの温度でも低温状態になると、分子が活動して結晶化する。しかし、分子が活動できない氷点下では結晶化しない。
一方、二割弱とはいえ、蜂蜜は水分も含んでいる。氷点下になると凍る水を成分としているのだから「氷点下でも凍らないというのはおかしい」となる。
この指摘はもっともで、厳密には、蜂蜜もやはり凍るのである。実は、マイナスの二十~三十℃に設定されている業務用の冷凍庫でなら、蜂蜜は凍結する。
この現象は凝固点(液体が凝固し固体化する温度)に関係する。一般的に、水分量が減って、糖度が高くなればなるほど凝固点は低くなる。
水分が二割弱、糖分が約八割の蜂蜜の凝固点はマイナスの二十~二十五℃。約マイナス十八℃設定の家庭用冷凍庫なら凍らず、業務用冷凍庫なら凍るのは、蜂蜜の凝固点の温度にあったのである。
蜂蜜は、非常に凍りにくいとは言え、全く凍らないのではない。一般的には、家庭用冷凍庫を念頭に置くので、「蜂蜜は凍らない」で通用しているわけである。
(完)
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