渡辺 碧水
【純粋蜂蜜は結晶化する(五)から続く】
既に触れてきたように、結晶化には、結晶の中心となる「結晶核」の存在がある。
結晶核によって、糖質の微細な結晶化が促進され、結晶が成長して固体状になるわけである。
雪の結晶は、ごく細かい塵などを核にして空気中の水分子が固まり氷の粒ができるのだそうだが、蜂蜜の結晶においても、核(中心)となる物質が存在する。
蜂蜜の場合、目に見えないほどの微小な「花粉」が中に入っていて、それが主要な核になっているとされる。
蜜源花の種類の違いによって、蜂蜜の結晶化の前後(液体状と固体状)に含まれる花粉数に違いがあること、および固体状の蜂蜜の方に花粉が多く含まれることは、(二)で紹介した吉垣茂らの研究でも実証されている。
ほかにも蜂蜜の中に混在している微小な巣の破片やチリなども核となっていると言われている。
濾過していても、花粉を残すために、あまり目の細かいフィルターを通していない蜂蜜の場合には、混入する不純物も残っていると見なければならない。
容器の中に目に見える形で存在する「気泡(泡状のもの)」もまた、生の蜂蜜の化学反応の過程で生じるもので、結晶核の一つとなる。気泡を完全になくするには、高熱処理によって酵素の働きを止める必要があり、品質を損なう過剰な処理になる。
また、冷蔵庫の上など、振動が伝わりやすい場所に保管すると、結晶化を促進する。振動によって、蜂蜜が空気と多く触れて、気泡が発生しやすくなるからである。
多くの場合、開封後、残りが少なくなると白く濁り始める。これは開封後、空気中のホコリなどの不純物が入り、それが結晶の核となるからだと判断される。
以上、蜂蜜の結晶化(固体化)の様相(主な要因と過程)をみてきた。
既に明らかなように、蜂蜜自体に固まろうとする特性があるから、結晶化は遅らせることはできても、防止はできない。
併せて解説を要する結晶化した蜂蜜の溶かし方については、本稿が長くなったので、今回は言及しない。機会をみて別稿で採り上げたい。
(完)
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