渡辺 碧水
【本物の蜂蜜は結晶化する(四)から続く】
蜂蜜の結晶化は複数の条件が重なって起こる。
次の条件は、蜂蜜の保存環境、つまり保管状態の違いで、温度の程度と変化が影響し、結晶化が早まることである。
「蜂蜜は、収納場所の温度が五~十四℃であるときに結晶化しやすい」「収納場所の温度の変化が大きいほど結晶化が促進される」
まず、容器が保管されている所の温度の違い。季節や暖房、日射も関係するが、室温、直接的には収納場所の温度が低くなれば、概して結晶化しやすくなる。
含有のブドウ糖が影響を受けるのであるが、ブドウ糖の溶解度(飽和状態を保つ度合い)は温度が低くなるほど小さくなるからである。
しかし、溶けているブドウ糖が結晶化するためには、ブドウ糖の分子が動き易い状態でなければならないので、ある程度の温度が必要である。
それはおおよそだが、五~十四℃の保存環境。最も結晶化しやすい温度は約十三~十四℃といわれている。
したがって、低温保存がよいと思って冷蔵庫に入れて置いたら結晶化した、長期保存にと冷凍庫に入れても凍らなかった、という予想外の状況を招くことになる。
ちなみに、水分が少なく糖度が高い蜂蜜は、凝固点が低く、家庭用の冷凍庫では、蜂蜜は凍結化も結晶化もしないのだそうだ。
また、蜂蜜を保管している収納場所の気温の変化が大きいほど、結晶化が促進される。季節的に、昼夜の温度差の大きい春先と晩秋の時期が、その影響を大きく受ける。
結晶化が始まると、どんどん進行が速くなるし、一度結晶化すると、再度結晶化しやすくなる、という性質もある。
一般的に結晶品が望まれない傾向にあることから、結晶化を遅らせるための細工が事前に加えられるおそれもある。結晶の核になる花粉などを濾過して取り除いた商品が暗黙の下に造られる。
これでは、蜂蜜本来の特性が損なわれてしまう。そんな作為を助長しないためには、蜂蜜愛好者は結晶化を当然視する姿勢が大切である。
【本物の蜂蜜は結晶化する(六)へ続く】
(完)
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