渡辺 碧水
【本物の蜂蜜は結晶化する(二)から続く】
蜂蜜の結晶化は液体状から固体状への形状の変化の過程である。
養蜂場での作業で、巣箱の巣板を遠心分離機にかけ、巣房から搾り採られた蜂蜜は、最初は滑らかな液体状であるが、概括して時間の経過とともに蜂蜜の中に少しずつ小さな白い粒 々が現れ始め、その小さな各粒が核になって固形物が次第に全体に増えていく。
傾向としてではあるが、ブドウ糖の含有量が相対的に多い蜂蜜(例えば、ナタネ蜜)では進行が早く、粒状の結晶はきめが細かい。逆に、ブドウ糖の含有量が相対的に少ない蜂蜜(例えば、アカシア蜜)では進行が遅く、結晶はきめが粗く、結晶化開始当初は粒状を数えられるほどである。
どのように結晶化していくかは、蜂蜜の比重によって異なる。
平均的な蜂蜜の比重は約一 ・四。この数字は、ブドウ糖などの糖類が水に溶ける飽和状態を意味する。いわば、少ない水分の中に、主成分の糖類が無理やり溶け込んで最大限に達している状態にある。
水の比重が一 ・〇であるから、蜂蜜を水の中に垂らしたとき、本物の蜂蜜は水に混ざらず、水の下に沈むわけである。
蜂蜜の保管状態の温度低下など、条件や状態の変化が生じると、蜂蜜に含まれているブドウ糖の飽和状態が過剰になるが、その影響を受けて結晶化が始まる。
比重の小さい種類の蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜より比重の大きい結晶は底に沈殿するため、底の方から結晶化するかのような印象を受ける。比重の大きい種類の蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜と結晶の比重の差がほとんど同じであるため、液中に浮遊し蜂蜜全体が濁っていくような印象を受ける。
結晶化は、透明感のあるトロトロ状から濁り感のある半結晶化の「ザリザリ」や「ドロドロ」の状態を経て、最終的に、蜂蜜全体が結晶化して固まってしまうと、乳白系色のカチカチの固体状となる。
ナッツ蜂蜜漬け大好きの寄稿者が「すくおうとしても固くてスプーンが入らなかった」のは、まさに最終状態の蜂蜜を買ったからである。
【本物の蜂蜜は結晶化する(四)へ続く】
(完)
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