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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜と私

青生 恵怜

 

 ティーカップに輪切りのレモンと、スプーン三杯の蜂蜜。レモンの果肉をスプーンでつぶすと、ゆらゆらと模様を描きながら、とろんとした蜂蜜がさらりとゆるくなる。ストーブの上の薬缶からお湯を注げば、ふわりとした蒸気にしゅっとしたレモンと、甘いだけではない蜂蜜の真っ白じゃない香りがたつ。
 祖母や母は、冬の日、外から帰るとよくこうやってハニーレモンを作ってくれた。
 炬燵に入ってぬくぬくと、ティーカップの中をスプーンで混ぜながら祖母が洗濯物を畳んでいるのを手伝うでもなくおしゃべりをしながら眺め、母の台所仕事の音を聞いて過ごした夕方。今も祖母のかっぽう着の冷やっとした合繊の肌触りや、かすかなお線香の香を思い出す。
 二十年ほど前、いろんな植物から採取した蜂蜜が流行っていたと思う。私も、長野に眠る祖母のお墓参りの帰りに、人にあげよう、喜ばせようと桜の蜂蜜を買って帰ったことがある。今度会ったらあげようと胸いっぱいの思いだったのに、人にあげられなかった。あげられないまま桜蜂蜜の瓶は二十年たっても私の本棚に置いてある。光を通すほどの薄茶色だった蜂蜜は、クリーム色の結晶に変わってしまった。
 それにしても、蜂蜜の甘さは、和三盆、黒砂糖、上白糖、どんな砂糖よりも力強い。ミツバチの体を通って私たちの口に入るだけのことはある。
 ハニーレモンの頃や桜蜂蜜を求めた頃よりもずいぶん物思うことが増えた。そんな今も、職場の机の中には、蜂蜜飴。一粒の力強い甘さと香りが私に冷静さと気力と難所を切り抜くヒントを与えてくれている。

 

(完)

 

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