あやむら
大学の地下にある薄暗いサークル室でダラダラと課題をやりながら、ヒリヒリと痛む喉を癒すため、蜂蜜を瓶からトロッと掬って飲んでいると、地上とつながる螺旋階段から先輩がトボトボと降りてきた。いつも通り私が「お疲れ様です」と声をかけると、彼はいつもとは違って口をポカンと開けて固まっていた。「どうしたんですか?」と声をかけると「それはこっちのセリフだよ。なんで蜂蜜単体で飲んでるの?」と呆れ顔で言った。
どうしたもこうしたも、それが私の健康法なのだ。喉を治すためにプロポリスと書かれたのど飴を買うくらいだったら、直接蜂蜜を飲んだほうが良い、と言うのが私の小さい頃からの持論なのだ 。信じる力というのは強いもので、大抵蜂蜜を食べておけば次の日には喉はすっかり元どおりになっている。
この話をすると先輩はやっぱり呆れ顔だったが、笑ってくれた。ほんわかした黄色い笑顔はいつも通り綺麗だった。「やっぱり君って単純でまっすぐで面白いね。悩んでた事がバカらしくなっちゃった」と彼は言った。私は「それどう言うことですか」と拗ねたような苦笑いで返した。そんなにまっすぐ気持ちを伝えられる人間じゃないんだけどな、と思いながら。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.