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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜の流れ

慈泉 武

 

 私は、いつも蜂蜜を食パンにつけて食べている。その際、蜂蜜の瓶の中にスプーンを入れて、その凹部に蜂蜜を満たしてから、平らに皿の上に載せられた食パンの中央部を目がけて蜂蜜を垂らす事により、蜂蜜を食パン全体に塗り付けてから、食パンをおもむろに側面から食べることにしている。が、ある朝、何時ものようにスプーンから食パンの表面に蜂蜜を垂らし始めたら、蜂蜜の流れが食パンの面に対して垂直に落ちずに、この仮想垂直線の周りを急速に回転し始めた。私は、これに驚き、眼前に出現した優美な物理現象に魅了されて、この現象について考えてみた。先ず、私の頭に浮かんだ事は、蜂蜜の回転駆動力は、地球自転の結果生じるコリオリ力である。良く知られているように、コリオリ力は、北半球においては流体粒子を流れる方向に向かって、右方向へずらす作用をする。 したがって、スプーンから垂らした蜂蜜中の粒子には、上から見て右方向にコリオリ力が働くので、蜂蜜の流管は時計方向に回転するはずである。
 以上のように考えて、再び、スプーンから流れ落ちる眼前の蜂蜜の流管を観察すると、私が得た結論とは、真反対に驚くべき速さで、この流管は仮想垂直軸の周りを振動しながら反時計方向に回転を続けていた。しかも、流管の軌跡は、仮想垂直軸を中心軸とする円錐面を描きつつ、遊園地のメリーゴーランドの中の回転木馬のように振動を繰り返しながら回転を続けているのであった。もちろん、この間に、食パンの表面には、蜂蜜の流管が描く回転渦模様が描かれ、積み上がる暇もなく、重力の作用により放射状に流れ広がりつつあった。それにしても、粘性が高く、極めてゆっくりと流れる蜂蜜を、流れ方向に向かって左方向、すなわち反時計方向に回転させる駆動力はいったいどこから来ているのであろうか。これは、白山の麓に住む一人の学究の朝食中に突然現れた、神秘な蜂蜜の流れとの出会いの一こまである。

 

(完)

 

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