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蜂蜜エッセイ応募作品

雪とアカシア

木村 留美子

 

 子供が高校生になって、コーヒーを飲むようになった。
 「勉強の時はやっぱこれだねー」
 と、私が淹れたのをサーバーからマグカップに注ぎ、たぽたぽと牛乳と蜂蜜を加える。
 「それ、国産アカシア蜂蜜だから。もうちょっと遠慮がちに使ってくれる?」
 「えー、このぐらいは入れるでしょ」
 大甘コーヒーを拵えて、ご満悦だ。
 ティースプーン2杯ほどまで、と規定しても、スライドバー式の蜂蜜容器を傾け、どっと入ってしまったらそれまでだ。
 「贅沢三昧だなー」
 「いいじゃん。お母さんこれまで、高級豆をちゃぽちゃぽ淹れて、美味しそうに独り占めしてたんじゃん。私が進学して家出たら、また独り占めじゃん」
 それもそうだなと納得し、受験期間うち、こまめにコーヒーを淹れ続けた。
 センター試験前に、これでもか、のドカ雪が降った。交通の麻痺と流通網の混乱のニュースを見ていると、台所から、
 「何これ? 蜂蜜が、がんがんに固まってて全く出て来ないんだけど!」
 それでも理系か? と心の中で突っ込んで、
 「冬場の寒さで、結晶化してそうなるの」
 「え? でも今までこんなカチコチになったの、見た事ないけど?」
 「それはね、うちはずっとアカシア蜂蜜だったから」
 アカシアだと、冬でも固まらないのだ。
 「すごいね、アカシア。で、いまこそアカシアのすごさが良く分かるって時に、なんでアカシア以外のを出してきて、こうも固まらせてんの?」
 「遠慮なくだばだば使いまくって、在庫切れさせた人が、それ言う?」
 小鍋で容器ごと湯煎して、固化した蜜をゆるゆる溶かし、この日も蜂蜜牛乳コーヒーにたどり着いた。

 

(完)

 

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