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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜トースト

探渓

 

 日曜日の朝は海に行くと決めていた。暗いうちにサーフボードを車に載せ、日の出とともに波に乗った。出がけには前の晩に買って置いたおにぎりを頬張り、コーヒーを流し込んだ程度だったので、数時間遊んで帰ってくると相当に腹が減っていた。妻は仕事で日曜日も忙しいのだが、ある日、遊びから帰ってきた私に蜂蜜を使ったトーストを作ってくれた。それは、塊のままの食パンをくり抜き、くり抜いたものをさらにブッロクに切り、再度詰め直して蜂蜜をたっぷりかけ、トースターで焼き上げたものだった。初めて食べた時、複雑な甘い旨味と芳醇な香りで、疲れが吹っ飛んだ。その日以来、パンの塊を買ってきた時はそのトーストを、お願いするようになった。
 娘が生まれて、赤ん坊に蜂蜜はいけないとのアドバイスを受けてからは、しばらくの間、このメーニューを封印した。蜂蜜そのものも買わないようにしていた。しかし何年か経った夏に蜂蜜の大瓶をもらう機会があり、再びあのトーストが復活した。娘も初めて食べた時から大好きだった。
 あれから20年近く経ち、娘も社会人となった。私は相変わらず海に行っている。そんなある日、妻は年末に長い休みをとり、持病を改善するため入院した。なんだか心配で、毎日娘と見舞いに行った。海に行くのもやめた。仕事帰りの誰もいない夜、甘いものを欲しかったときに、蜂蜜トーストを作ってみた。残念ながら、焦がした挙句に、中はグチャグチャになってしまった。妻に話すと「手順はあっているのにね」と、不可解な様子だった。
 一月後、妻は全快した。私は心配事が無くなったので、また海に出かけている。寒波に覆われた日の波は良かった。朝のうちに帰宅して、例のトーストをお願いした。焼きあがったトーストを食べながら、富士山がよく見えたことなどを二人に話した。冷えた身体に蜂蜜が染み込んでいった。妻に美味いと伝えたら、「当然」と言って、あわただしく出勤していった。

 

(完)

 

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